セラミックスを通電修復で長寿命化するスゴい技術
物材機構が開発
物質・材料研究機構の森田孝治主席研究員は、千葉工業大学と名古屋大学と共同で、セラミックスの通電修復技術を開発した。クラック(亀裂)をガラスなどの添加材で埋めるのでなく、母材と同じ物質が埋めるため特性を損なわない。セラミックスは金属材料などと比べるとリサイクルしにくい。修復できると寿命が延びる。タービンブレードや燃料電池などの付加価値の高い部材に提案していく。
セラミックスの温度を上げると電気を流すようになるフラッシュ現象を利用する。実験ではジルコニアを800度Cまで予熱し直流電流を流し、ジュール熱で1230度Cまで昇温した。これで長さ20マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のクラックを修復できた。
電気を流さずに1230度Cまで加熱しても修復は進みにくい。電流が原子拡散やクラック修復を促し、約3倍修復速度が向上した。フラッシュ現象が起きる材料には広く適用できると考えられる。ジルコニアの焼結温度は1400度Cのため、800度Cと通電で修復できると部材を長く使え、環境負荷を抑えられる。
セラミックスは部材内部の微小なクラックに特性が左右される。修復だけでなく、製造時にもクラックを除く処理として利用できる。特に切削や研削で加工された部材は機械的に微小な損傷が残ることが多かった。
今後、微小クラックと部材の寿命管理なども研究を進める。詳細は10日から日本セラミックス協会が開く「2022年年会」で発表する。
日刊工業新聞2022年3月10日