「全固体」軸に巻き返せるか、政府が蓄電池産業テコ入れ
政府は2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を見据え、車載用や定置用蓄電池の国内生産能力を、30年までに現状比約8倍の計150ギガワット時、グローバル生産能力を同約10倍の計600ギガワット時とする目標を設定した。次世代技術として期待される全固体電池の開発支援を含め、国内蓄電池産業の基盤を固める。現行のリチウムイオン電池は日本が先行したが、中国や韓国メーカーの猛追で劣勢に立たされており、蓄電池産業のテコ入れを図る。
「中国企業や韓国企業が政府と一体となって積極的な投資を行い、すさまじい勢いで成長を遂げている。今や我が国の蓄電池産業は、半導体や液晶ディスプレーと同様に、他国の後塵(こうじん)を拝している状況だ」。新たな目標を設定した蓄電池産業の官民協議会で、萩生田光一経済産業相は危機感をあらわにした。
カーボンニュートラルを推進する政府は、自動車の電動化や再生可能エネルギーの主力電源化を実現するための重要技術として蓄電池を位置付ける。現在、蓄電池の主力であるリチウムイオン電池は日本発の技術で、いち早く製品化にこぎつけ先陣を切った。しかし、政府の支援を受けた中韓メーカーがコスト競争力を高めシェアを拡大。車載用も定置用も日本のシェアは低下した。
脱炭素に伴い世界の蓄電池市場は車載用も定置用も拡大する見通しだ。政府は国内とグローバルの生産能力目標を新たに設定し、シェアを維持・拡大することで競争力向上を図る。経産省は30年の世界市場が3000ギガワット時まで拡大し、シェア20%を確保する試算を示している。
萩生田経産相は「これまでは官による支援は研究開発までで、それ以降は民間の仕事という線引きがあったが、これからは国も一歩前に出て研究開発だけでなく社会実装や、その先の設備投資までをしっかりと支援する」とする。すでにある1000億円の基金に加えて、政策パッケージを検討し、民間企業の積極的な投資を促す。グローバル展開の足場となるマザー工場に対しても支援を行う方針だ。
全固体電池の開発をめぐっては、これまで日本が先行してきたが、中国を中心に各国が強化しており、国際競争は激化。経産省として、産学官による次世代電池や材料の技術開発を推し進めていくほか、全固体電池の量産に向けた製造体制の整備も検討する。これらを盛り込んだ「蓄電池産業戦略」は今夏に最終的に取りまとめる予定。
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