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コロナで苦境のイベント、「ユニークベニュー」拡充で将来展望につながるか

コロナで苦境のイベント、「ユニークベニュー」拡充で将来展望につながるか

インタラクティブフロアアートも駆使。これからのユニークベニューを象徴する(2月、都内で。東京観光財団提供)

コロナ禍の長期化で痛手を受けているイベント業界。制約下での事業運営を模索する動きが広がる中、東京都が新たな開催スタイルを発信している。歴史や特色ある建造物をイベントやレセプションなどに活用する「ユニークベニュー」を軸に、小規模化、分散化など新型コロナウイルスの感染拡大で顕在化する開催ニーズに応える狙いだ。(編集委員・神崎明子)

2022年2月。コロナとの共存時代を象徴するイベントが都内で開催された。東京・有明に20年に開業した世界最大規模の屋内型ミニチュア・テーマパーク「スモールワールズ東京」と、同じく臨海部にある「東京国際クルーズターミナル」をネットでつなぎ、それぞれの会場で繰り広げられるアクロバティックパフォーマンスや環境に関する取り組みを配信した。主催した東京観光財団によると「二つの中継会場を切り替えながら、オンラインでも飽きさせない構成でコミュニケーションを図り、大いに盛り上がった」。

デジタル技術を駆使してリアルとオンラインを併用するハイブリッド型イベントはコロナ禍を機に定着しつつある。加えて、誘客効果が大きいとしてコロナ前から国や自治体が利用促進に力を入れてきたのが、特別感を演出しながらイベントを開催できる会場「ユニークベニュー」の整備だ。海外ではノルウェーのオスロ市庁舎ホールがノーベル平和賞の授賞式会場になっていることで知られるが、先の都内のイベント会場となった東京国際クルーズターミナルもユニークベニューの一つだ。

都はこうした施設数の拡充や会場設営費の助成を通じて利用を後押ししてきた。現在、都内にあるユニークベニューは、浜離宮恩賜庭園や東京都庭園美術館、葛西臨海水族園など都立13施設、民間施設も日本橋三越中央ホールや東京スカイツリータウンなど60施設を数える。

22年度も新たに助成事業の募集を始めた。ユニークベニューとして50人以上の立食スペースを確保できる都内の施設所有者や運営管理者などを対象に、受け入れ環境の整備に必要な経費について1000万円を上限に助成する。またこれら施設を活用した会議やイベントを企画する主催者に対しては会場設営費を助成。ステージや音響、照明機器のほか、オンライン配信に伴う映像機材も助成対象となる。

イベントの企画運営会社は経営体力に乏しく、長引く需要低迷で事業継続が危ぶまれるケースが少なくない。こうした施策も活用しながら新たな開催形態を確立し、将来展望につなげる効果も期待される。

日刊工業新聞2022年4月8日

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