ZOZOの次なる挑戦は何か?SXSWに初出展した狙いとは
ZOZOの研究開発を担うZOZO NEXT(千葉市)は、アパレルやECだけにとどまらない「ファッション」の価値や体験を見据えた開発を推進する。プロジェクトを広く紹介するとともに、新たな意見を取り込む場として、米テキサス州で開かれた先端技術や音楽、映画の複合イベント「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2022」に初出展した。同社運営のECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」にてサービスを展開している足の3D計測用マット「ZOZOMAT」や、スマートテキスタイルなどを展示した。
色を制御できる布
ZOZO NEXTは、ZOZOグループの研究開発を小回りのきく企業規模でスピードアップさせることを目的に、2021年10月発足した。また、ZOZO内の研究開発部門を統合・再編成した同社と、海外の研究開発子会社2社がコミッティを形成し先端技術開発を進めている。ZOZOMATなどのコア技術や、3Dバーチャルアバターを用いたバーチャル試着サービスなどを開発してきた。現在、Media、AI、Textile、Robotics、IoT、XRといった6領域に注力している。
SXSWでは、その中から3テーマのプロトタイプおよびサービスを出展した。
特に想定外の反応があったのはスマートテキスタイルの出展だ。西陣織の老舗企業である細尾の伝統技術と、東京大学とZOZO NEXTが開発したテクノロジーを組み合わせた。温度変化によって模様が浮き出る西陣織や、特殊なチューブを織り込み染色と退色を繰り返す西陣織を展示。「スマートテキスタイルに対し『サステナブルだ』という意見があり驚いた。サステナビリティに対する質問も多く、関心の高さを実感した」(金山裕樹代表取締役CEO)。
今後、このスマートテキスタイルは何かしらのプロダクトでの発売を見据えている。例えばソフトウエア制御で自由に色を変えることができるソファやバッグなどができれば、一つの製品で多様な色を楽しめ、サステナビリティにつながるというわけだ。
ただし、ZOZO NEXTではこのスマートテキスタイルを機能軸で訴求することは考えていないという。「優れた機能性繊維や製品はすでに多くあるが、ZOZO NEXTはファッションテックを追求する企業として、官能部分、エモーションに訴えられるような製品を開発したい」と金山CEOは強調する。このコンセプトに共感し、ビビットな反応を得るには最先端のテック・カルチャーへの興味が強い「アーリーアダプター」や投資家が集まるSXSWが適していた面もある。
ZOZOMATを海外展開
また、同社では足の3D計測用マット「ZOZOMAT」をはじめ四つの計測ツールを開発している。今後これらの海外展開を積極化するにあたり、SXSWにて利用実態の調査を実施。他社で類似のサービスはあるものの、すでにゾゾタウン上でサービスが稼働しており、ZOZOMATは200万人超、ZOZOGLASSは110万人超(※1)というユーザーデータの蓄積やフィードバックがあることが大きなアドバンテージになっている。金山CEOは「ライセンスのみ販売するのではなく、自分たちで開発し、使って良いと思ったものを外販している点も強み」と話す。
来場者からは「3Dスキャンには大型の機械が必要な場合が多いが、(機器が小さいので)気軽に計測できるところが良い」と好評で、提携に向けた話もあったという。
ブースには海外のラグジュアリーブランドのデジタル担当者も訪れたという。「コロナ禍を本格的な契機として、ファッションブランドが先端テクノロジーにアンテナを張り、デジタル変革(DX)に積極的になっている」と金山CEOは話す。
金山CEOは「SXSWに参加して最も印象に残ったのが、会場のあらゆる場所で『Web3.0(ウェブスリー)(※2)』が話題になっていたこと」だと話す。ZOZO NEXTでは開発中の6領域に加え、Web3.0への参入も視野に入れていく必要性を、今回のSXSWで再確認したという。「ZOZOはPCからスマートフォンへの移行はスムーズにいったと自負している。同様にWeb3.0へも適切なタイミングで参入していきたい」(金山CEO)。
(※1) 2022年1月末時点
(※2) ブロックチェーン上で動く、非中央集権のインターネットやソフトウエア、組織の総称