マツダのけん引役、世界市場に投入する新型SUV「ラージ商品群」の全容
マツダは2023年までに、「ラージ商品群」と称する新型スポーツ多目的車(SUV)4車種を世界市場に投入する。同社初のプラグインハイブリッド車(PHV)など、モーターや大排気量のエンジンが混在可能な拡張性の高いプラットフォーム(車台)が特徴で、新たな旗艦車種に育てる。その第1弾の中型SUV「CX―60」の日本仕様を7日に公開。マツダブランド強化へ向けて、「大変革の時代に企業のあり方や生きざまを示す序章」(広瀬一郎専務執行役員)と位置付けるラージ商品群に大きな期待がかかる。(広島・青木俊次)
ラージ商品群はマツダにとって最上位に位置付けられ、車体サイズは売れ筋の現行SUVである「CX―5」を上回る。エンジン、モーター、自動変速機(AT)を同軸上に置く縦置き型のプラットフォームで、後輪駆動(FR)とFRベースの全輪駆動(AWD)を採用。同一プラットフォームで、さまざまなエンジンとモーターを組み合わせることが可能だ。
中井英二パワートレーン領域執行役員は、高級車で多いFRをラージ商品群で採用した理由について「車輪の前後で操舵(そうだ)と駆動に分け、操作性をより高められる」と話す。また、パワートレーン(駆動装置)の柔軟な組み合わせで「道の広い米国は大型で大パワー、欧州は環境、日本は取り回しの良さが重視される」(松本浩幸商品企画担当執行役員)といった各地域のエネルギー事情や嗜好(しこう)にも応えた。
日本仕様は初秋の発売を予定。ドライバーを常時、モニターで見守り、発作や急病などの異常を検知し、事故の回避や事故の被害軽減を支援する新システムをオプションで初めて採用した。
駆動装置は高燃費・高トルクのエンジン「スカイアクティブG/D/X」と、PHVや48ボルトマイルドハイブリッドの電駆システムをそろえた。ATでは、トルクコンバーターレス8速ATを新たに開発。従来の6速ATより、トランスミッション抵抗を約22%減少させている。
マツダ初のPHVとなる「CX―60PHEV」は、スカイアクティブGの2500cc直列4気筒ガソリンエンジンに高出力モーター、大容量バッテリーを組み合わせた。一方、マイルドハイブリッドには、2段エッグ燃焼室や高圧燃料噴射などを採用したスカイアクティブDの大排気量3300cc直列6気筒ディーゼルエンジンを新開発。48ボルトモーターが、大排気量エンジンの弱点である低負荷領域をアシストし、現行のコンパクトSUV「CX―3」並の燃費ながら高いトルクを実現した。将来に向けバイオ燃料などへの対応も視野に入れる。
マツダは25年までにラージ商品群をあと3車種投入し、25―30年にはバッテリーEVへの移行を予定する。他社に比べ後れを取ってきた電動化対応で巻き返すためには、今後どれだけラージ商品群のラインアップを強化し、販売を拡大していけるかがカギとなる。