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赤字幅拡大…燃料高騰が直撃する電力会社たちの苦悩

赤字幅拡大…燃料高騰が直撃する電力会社たちの苦悩

ウクライナ情勢の緊迫化で天然ガス、石炭など燃料価格が高騰(イメージ)

原油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格の高騰や、それに伴う卸電力価格の上昇が電力各社の経営を直撃している。10電力すべてが1月末の2021年4―12月期決算時に、22年3月期の連結業績予想を21年10月予想から大幅に下方修正しているが、ここにきて中部電力と北陸電力はさらに赤字幅が拡大すると発表している。

燃料費の値上がり分は一定の範囲内で2カ月後の電気料金に反映される燃料費調整制度の仕組みがある。ただ、この「期ずれ」による差損の拡大が決算に響いている。そもそも5社は燃調制度で調整できる上限に達しており、これ以上の料金引き上げはできない。経済産業省は25日の有識者会合で上限撤廃に向けた議論を始めた。

中部電力は同日に22年3月期連結業績予想の当期損益を、前回予想の450億円の赤字から500億円の赤字に下方修正した。経常損益も500億円の赤字から800億円の赤字とする。ロシアのウクライナ侵攻で天然ガスや石炭などの燃料価格が高騰していることを要因に挙げる。

北陸電力も28日に22年3月期連結業績予想の当期損益を、従来予想の30億円の赤字から過去最大となる70億円の赤字に修正した。経常損益も前回予想の0円から200億円の赤字とした。燃料費高騰に加え、同社は電源構成で水力発電が多いため、渇水による水力発電量の減少も影響しているという。

ロシアのウクライナ侵攻で原油をはじめLNGや石炭が高騰する。各社は基本的には燃料の大半を長期契約している。ただ、電気は需要(使用量)と供給(発電量)を常に一致させることが必要なため、燃料は必要分のみ調達して計画的に発電し、不足する電力は卸電力取引所から調達している。油価高騰でこの取引価格が上昇していることに加え、低気温などによる電力需給逼迫(ひっぱく)でさらに価格は上昇傾向にある。数社は水力発電が渇水で稼働できない時のために積み立てている渇水準備引当金を、22年3月期決算に合わせ取り崩すなど涙ぐましい努力を続ける。

日刊工業新聞2022年3月31日

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