生き残りかける…自動車部品メーカーが「脱炭素」奮闘
自動車部品メーカーが二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けた新たな取り組みを急ピッチで進めている。設備投資や作業負担は増すが、サプライチェーン(供給網)全体でのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現が求められる中、部品メーカーにとって生き残りを賭けたテーマとなっている。
武蔵精密工業はCO2排出量を費用に換算する「インターナルカーボンプライシング」(ICP、社内炭素価格制度)を投資判断に取り入れた。国内の新規投資が主な対象だが、海外拠点に広げることも検討する。
東海理化は製品材料のCO2発生量に関するデータベースを23年にも構築。「自動車メーカーと連携し、バイオマス由来の樹脂など環境に優しい材料に変える取り組みも進めたい」(二之夕裕美社長)という。ニッパツは22年度から生産設備の導入に向けた稟議(りんぎ)書で、CO2排出量の算定を必須とする。「生産技術を大きく変化させる」(茅本隆司社長)考えだ。
専任組織の立ち上げも相次ぐ。愛三工業はカーボンニュートラル関連のプラントエンジニアリング環境部を「カーボンニュートラル推進部」に改称した上で2部署を新設。従来のプラントエンジニアリング環境部は40人強だったが、3部署で計120人程度に拡大した。30年までに製造時のCO2排出量を13年比5割削減する目標を設定。「まずは今までの仕事の中でCO2削減の努力を積み上げる」(野村得之社長)。
完成車メーカーはサプライヤーに脱炭素の取り組みを求める。トヨタ自動車は主要部品メーカーに21年のCO2排出量を前年比3%減らすよう要請。ホンダも25年度から19年度比で年4%ずつ排出量を削減するよう求めた。日産自動車は10社弱のサプライヤーとCO2削減に向けた課題を共有する取り組みを試験的に始めた。
日本自動車部品工業会(部工会)は30年度にCO2排出量を07年比28・6%減とする目標を掲げる。21年に「カーボンニュートラル対応部会」を発足。セミナーやホームページなどを通じ、意識啓発を図る。尾堂真一会長(日本特殊陶業会長)は「中小メーカーも含め、脱炭素に取り組まなければ自社製品を買ってもらえない状況に追い込まれる」と語る。