継続も撤退もリスク…ロシアLNG調達で日本が立たされた岐路

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ロシアからのLNG調達にはリスクが伴う(サハリン2のLNG工場)

ロシアによるウクライナ侵攻の先行きが見えない中、同国での液化天然ガス(LNG)事業の不安が拡大している。サハリンでの石油・ガス開発事業から欧米の石油大手が相次ぎ撤退を決め、米国は経済制裁の一環としてロシア産の原油、天然ガスの輸入禁止を決めた。ただロシアの天然ガスに大きく依存する欧州は共同歩調はとれず、日本もサハリンをはじめとするロシアでの上流開発をどうしていくのか、岐路に立たされている。(編集委員・板崎英士)

日本企業がロシアで出資する主なエネルギー事業は、原油生産が中心のサハリン1、LNGのサハリン2、さらにギダン半島のアークティックLNG2プロジェクトやイルクーツクの共同探鉱事業(石油天然ガス・金属鉱物資源機構=JOGMECなど出資)がある。LNGの契約ベースではサハリン2やアークティック2のほか、建設に日本企業が参加したヤマルLNGからも調達実績がある。

サハリン1から米エクソンモービルが、サハリン2を含め英シェルがロシアから全面撤退を表明、英BPはロシアの石油大手のロスネフチの持ち株約20%の全売却、仏トタルエナジーズは同国での新規投資の停止など、欧米企業の撤退が相次ぐ。ロシア産の天然ガスに5割以上依存するドイツも、新規パイプラインのノルドストリーム2を中止し、同国初のLNG受入基地の建設を決めるなど、欧州のロシア依存から脱却する動きは急だ。

日本の判断は難しい。「ベースは先進7カ国(G7)と同じ対応だが、エネルギー安定供給と自主開発の重要性を考えると軽々に撤退とは言えない」と、小山堅日本エネルギー経済研究所専務理事は指摘する。

資源のないわが国が国策としてサハリン事業を進め、原油の約4%、LNGの10%弱を輸入している現実がある。それ以上に、日本の撤退が経済制裁に直結せず、ロシアの利になるのではという見方もある。「撤退すれば日本への仕向け分を中国が人民元建てで買い取る」(エネルギー分野のアナリスト)可能性があるからだ。昨冬のような厳冬でスポット調達が増えると、日本が中国経由でプレミアが着いたロシア産LNGを買うこともあり得る。

萩生田光一経産相は7日の国会で「日本が抜けても第三国が入れば制裁にならない」と答弁した。欧米が一部のエネルギー決済の銀行を除く大半の大手銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を決めたが、その抜け穴になる可能性が指摘される。

ロイター通信によると、このほどイタリアの官民の金融機関がアークティックLNG2に対し約5億ユーロ(約630億円)の融資の中止を決めたという。このプロジェクトはロシア企業が6割、中国資本が2割、日仏が各1割を出資する。国際協力銀行(JBIC)が21年11月に17億1000万ユーロ(約2160億円)のプロジェクトファイナンス(国際協調融資)を結んだばかりだ。足元では継続にも撤退にもリスクが伴う。

 ロシアは09年にサハリン2でLNG輸出国となり、21年3月には35年までに最大1億4000万トンのLNGを生産する長期計画を発表した。脱炭素化への移行期に重要なLNGをわが国がいかに確保するのか。事業投資への判断はプーチン政権後を見越した長期的な視点も必要だ。

日刊工業新聞2022年3月10日

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