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【ディープテックを追え】「最後の砦」救急医療にもAIの力

#63 fcuro

人工知能(AI)による画像診断が医療現場を変えようとしている。人の目だけでは見落とされていた疾患を発見するなど、さまざまな場面での応用がなされている。それは医療の「最後の砦」においても例外ではない。fcuro(大阪市旭区)は救急医療向けのAIで課題解決に取り組む。

救急医療の課題

救急医療の課題は疾患箇所を特定するまでに多くの時間がかかってしまう点だ。意識不明で運ばれた患者の様態を把握するため、コンピューター断層撮影装置(CT)を使う。この疾患箇所を特定する診断に多くの時間を必要とし、患者に治療にかけられる時間が限られてしまっていた。また多忙な救急現場で微少な疾患に加え、重大な疾患を見逃してしまうリスクがはらんでいた。

疾患検出AIのイメージ

同社は全身のCT画像から疾患箇所を特定するAIを開発する。CT画像の読み解き時間を10秒に短縮し、治療にかけれる時間の確保と見逃しのリスクを低減する。岡田直己最高経営責任者(CEO)は「まずは外傷を専門にする」と話す。現在はCT画像から疾患箇所を判断するだけだが、3年以内に重症度も把握できるようにする。

多くの医療用画像診断は部位を限定的にすることで見逃しを防いだり、システムが遅滞しないようにする。同社では部位ごとに疾患を判断するAI群を構築。全身CT画像から判断しつつ、遅滞が起こらないようにする。市販のコンピューターでも性能を発揮できるようにした。

新型コロナウイルス感染を判断するAIのイメージ

同時に新型コロナウイルスの感染をCT画像から判断するシステムも開発する。システムの特徴について岡田CEOは「間質性肺炎など、似た特徴を持つ他の疾患とも区別することができる」と説明する。4500の症例と215万データを読み込ませて実現した。

岡田CEO

救急医でもある岡田CEOは「(救急医療の)現場は常に人が足りない」と指摘する。そんな状況からAIによる画像診断で補うことを考え、独学で研究を始めた。現在でも医師として週5日の勤務をこなす。岡田CEOは「会社をマネジメントするだけのCEOだったら自分の価値はない。医療現場に出てその肌感覚を製品に落とし込むことこそ、価値だ」と笑顔で話す。将来はCT診断システムを起点に各専門医へつなげるエコシステムの構築に力を入れる。

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