アステラス製薬会長が経営者として常に意識してきた「未来との対話」

畑中 好彦氏

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畑中 好彦氏

2005年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業の合併により発足したアステラス製薬。準備段階から経営企画部長として奔走した。発足して一息ついた頃、若手の女性社員に指摘された。「今のアステラスは全然魅力的じゃない。何を目指して、何を大事にしているのか全く見えない」。この言葉が胸に刺さった。

「健全なR&Dリスクが取れる会社」など三つの目標達成の時間を買うため一緒になる、という合併目的は明確だった。歴史ある企業同士が一緒になるので、処遇を公平にするなど制度は整えた。だが、指摘された言葉で「社員の気持ちに寄り添ってなかった」と気付かされた。「最後は従業員が『自分はこの会社のために頑張る』と思えることが一番重要とわかっていたのに、そこに思いが至っていなかった」と反省した。

仕事をする際に常に意識してきたのが「未来との対話」だ。社員や組織、家族、友人、社会に対して自分は良いこと、認められることをしているのか、自問自答してきた。11年に社長に就任して以降、未来との対話で最も悩んだのは事業の縮小や撤退だ。

「経営資源には限りがある。この事業を続けた先のアステラスを懸命に想像し、結論を出してきた。もちろん解は一つではない。寝ても覚めても考え抜く。そして自分が出した結論には、何があっても責任は自分が取る。経営者にはそうした覚悟が必要だ」

覚悟を持つためにも、人生においては「一人称で生きる」を信条としてきた。

「私が自分の意思で決めたことであれば、失敗しても人や環境のせいにすることなく、自分に責任があると理解できる」

もちろん、決して唯我独尊ではなく「いつも同僚や上司、部下などたくさんの人に支えられてきた」と感謝は忘れない。人とのつながりの大切さを承知しており、従業員にはことあるごとに伝えている。

「昇格した人には組織を作る時、気が合う人を選びがちだが、異なる意見を持つ人であってもベストな人材を選ぶ。そうしないと後に自分が苦労し、組織も行き詰まる」

ことわざや難しい言葉を使わず、気持ちをシンプルに伝えることも心がけている。努力の甲斐あって「魅力的でない」と指摘された従業員に「良い会社になりましたね」と言われた。この言葉も心に残っている。(編集委員・丸山美和)

【略歴】はたなか・よしひこ 80年(昭55)一橋大経済卒、同年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。06年執行役員アステラスUSLLCプレジデント&CEO兼アステラスUSプレジデント&CEO、09年上席執行役員経営戦略・財務担当、11年社長、18年会長。静岡県出身、64歳。

日刊工業新聞2022年2月8日

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