富士通が開発した「5G仮想化基地局」の全容
富士通は、第5世代通信(5G)のスタンドアローン(SA=単独利用可能)方式に対応し、制御部(CU/DU)をソフトウエアで仮想化したオープンRAN仕様の基地局(仮想化基地局)を新たに開発し、3月から通信事業者に提供すると発表した。演算リソースを最適配分する独自技術により、従来の仮想化基地局で課題だった低消費電力化と高性能化の両立を実現した。同社の従来型基地局と比較し、複数台の利用において、二酸化炭素(CO2)総排出量を50%以上削減できるという。
2022年度中に各通信事業者の商用サービス網での展開に向けて、汎用サーバー上で動作するソフトウエアを検証用として提供する。また、グローバル展開に向け、28日にスペインで開幕するモバイル関連の国際展示会「MWCバルセロナ2022」に出展する。
新開発の基地局は中核となるソフトウエアの制御方式を改善することで、通信速度を高速化し、通信可能な範囲も2倍から4倍に向上した。ソフトウエア機能は順次アップデートし、通信事業者の脱炭素化の支援を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する。
地域や時間帯で変化する利用状況に応じて、サーバーの演算リソースを柔軟に変更可能。余剰な資源を削減して消費電力を低減する独自のダイナミック・リソース配分技術を開発した。人工知能(AI)などを用いて携帯電話利用者の移動やアプリケーション(応用ソフト)の利用状況を推定し、最適なリソース配置を実現する。
量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」の採用も目玉の一つ。多数の基地局の電波が重なる環境下での無線装置(RU)とCU/DUの組み合わせの中から、最適な接続先を高速に導き出すことが可能。デジタルアニーラの優位性について「運用の状態を常時監視しながらオンラインでリソース配分を最適化することで、全体最適のサイクルを速められる」(谷口正樹理事)という。