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アース製薬の収益力を急回復させた構造改革の中身

アース製薬の収益力が急回復している。2005年の上場以来初の当期赤字となった18年12月期には株主資本利益率(ROE)がマイナス0・3%にまで悪化したが、一転、過去最高益の更新を予想する21年12月期は同13・3%を見通す。窓を開けた換気が欠かせないコロナ禍で殺虫剤などの虫ケア商品の需要が急増した追い風もあるが、収益構造の改革が寄与している。

酷暑で虫ケア商品の販売に苦戦した18年12月期は販促費などを抑えきれず当期赤字を計上。営業キャッシュフローは約3億円と、前期の90億円強と比べると激減した。稼ぐ力が落ちてキャッシュフローが痛むと成長に向けた投資資金が毀損(きそん)すると痛感。収益改善を加速した。

同社の強さは営業力。上場以来16期連続で増収を記録しているが、主力の虫ケア用品が天候に左右される。そこで収益管理基盤を再構築し、グループ経営の強化も進めて販促費などの経費をコントロールするようにした。不採算商品を見直し、収益構造の改善に努めた結果、稼ぐ力は回復し「チャンスとリスクを見極めた上で、次の一手を素早く打つ体制が整った」(川端克宜社長)。

20年12月期のフリーキャッシュフローは前期比約3・5倍の214億2000万円。社員・株主への還元に加え、設備投資などの成長投資にバランスよく振り分ける方針。中長期的に目指す自己資本比率は45―50%(21年12月期第2四半期時点で47・8%)で、21年12月期4・4%を計画する純資産配当率(DOE)は4―5%が目安。ただ「総資産の15%程度は手元で確保しておきたい」(坂本泰範執行役員)。M&A(合併・買収)などの機会を逃さないよう「厚めの資金を確保する戦略」(同)だ。

「虫ケアで成長が見込める東南アジア市場を攻略したり、虫ケア以外の商品を増やしたり、収益をさらに平準化することに期待している」(広住勝朗大和証券シニアアナリスト)と、稼ぐ力をさらに高めていくよう求める声もある。改革は道半ば。成長に向けてアース製薬が「次の一手」を繰り出す時はそう遠くないはずだ。

日刊工業新聞2021年12月23日

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