NTT・トヨタが最大額発行、「グリーン金融」が3兆円を突破した
グリーンボンド(環境債)やサステナビリティー債(サステナ債)、グリーンローンなど環境事業に使う資金調達を目的とした金融5商品を合わせた「グリーン金融」の2021年の国内の発行・融資の総額が3兆4931億円となった。環境債ではNTT、サステナ債ではトヨタ自動車がそれぞれ国内最大額を起債したこともあって前年比93%増と成長し、初めて3兆円を突破した。温室効果ガス排出量を実質ゼロにする脱炭素達成に向けた資金の流れが加速してきた。
環境省の集計からグリーン金融の総額を計算した。環境債は環境事業に使う資金を調達するために発行する社債。再生可能エネルギー発電や省エネルギー設備への投資資金を集める企業が増加しており、21年は国内企業が99件、総額1兆8650億円を発行した。前年比80%増となっており、拡大の勢いが止まらない。
21年は大型発行も市場を盛り上げた。NTTグループが3000億円を起債し、エネルギー効率化や再生エネ事業に充てる資金を調達。JR九州も200億円、東京電力リニューアブルパワーも300億円を発行した。
サステナ債は環境だけでなく、社会課題解決のための資金を調達する。21年は前年比65%増の1兆7億円と初めて1兆円を突破した。トヨタは1300億円を起債して最先端の交通安全技術や電気自動車の開発、再生エネ発電所の開発資金を調達した。ほかには川崎重工業が100億円を発行し、水素エネルギー供給網整備に充てた。
グリーンローンは環境事業の資金を借り入れ、結果を報告する。21年の融資額は同84%増の1490億円だった。新電元工業は最新の省エネ型ビルの建設費として100億円を借り入れた。
ほかにも目標を設定して資金を調達するサステナビリティー・リンク・ボンドが1260億円、サステナビリティー・リンク・ローンが3523億円に拡大した。
世界の21年の環境債の発行総額は4433億ドル(50兆円)、サステナ債は1785億ドル(20兆円)とESG(環境・社会・企業統治)関連の資金需要が膨らんでいる。欧州連合の行政機関である欧州委員会が21年10月、世界最大となる120億ユーロ(1兆5700億円)の環境債を発行するなど、巨費が必要となる脱炭素資金の呼び込みが活発だ。
日本政府も環境整備を進めており、東京証券取引所が4月に開設するプライム市場の上場企業に気候変動対策の開示を求める。