業績の浮き沈み激しい道路機械メーカー、利益を安定的に伸ばすカギ
酒井重工業は6月に策定した「中期的な経営方針」で、2026年3月期に株主資本利益率(ROE)を8%に改善させる目標を掲げた。売上高も21年3月期の216億円から300億円、営業利益は同7億円から31億円に拡大を目指す。同時に資本戦略でこれまでの安定志向を脱し、グローバル水準の企業経営に脱皮を図るとしている。プライム市場の上場維持を確保し企業価値と株主価値を向上させ、株式市場を通じた柔軟な資金調達を可能にする狙いだ。
道路機械メーカーの同社は扱い商品のロードローラーの性格上、世界の景気や公共投資事業の影響で業績の浮き沈みが激しい。21年4―9月期は世界需要の回復で大幅増収増益を果たし、年換算ROEでも4・6%を達成したが、コロナ禍の影響を受けた前年同期ROEはマイナス3・4%とマイナス圏だった。利益を安定的に伸ばすにはインドネシアを起点にしたアジア市場深耕と北米市場の開拓、転圧管理システムや自律走行ローラーなど次世代技術の開発がカギを握る。
「事業活動を通じた成長戦略を講じつつ、資本政策を果敢に実行し、企業価値の最大化に取り組んでいく」。酒井一郎社長は決意を語る。
中計では26年3月期までの5年間に事業利益120億円を出すと同時に保有資産を見直し、事業戦略に資さない投資有価証券は売却する方針。研究開発に40億―55億円、設備投資に25億―35億円を確保するとともに配当資金として30億―40億円を確保、ROEを向上させる近道である自社株買いも「機動的に実施していく」(酒井社長)考えだ。
酒井重工業のROE(21年3月期は0%)は、同様に世界景気変動の影響を受けやすいコマツ(同5・8%)や日立建機(同2・1%)などと比較しても低い。向上には鋼材価格など最近のコスト上昇要因への対策も課題となる。客先への値上げ要請とともに、中国工場活用を含めたモノづくり構造改革を推進。需要変化に対応した“選択と集中”のグローバル戦略で飛躍を目指す。