電動農機の流れ加速も、普及を阻む壁

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世界各国の環境規制の強化を見据え、農業機械や道路機械の分野で電動化の研究が進んでいる。井関農機は2010年ごろから愛媛大学農学部と共同で電動トラクターを研究。エンジントラクターとの差額補填や税優遇措置などのインセンティブを背景に、欧米を中心に今後電動機が普及する可能性があると読む。酒井重工業は道路舗装用のローラーの電動化について「作れるめどはついている」(酒井一郎社長)としている。

建設機械業界ではコマツや日立建機などが電動の油圧ショベルを開発済みだ。米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領は環境重視の姿勢を打ち出し、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」への復帰を表明している。欧州や中国の環境規制強化に加え、米国の政策転換で、電動化の流れはさらに加速する可能性が高い。

一方、電気自動車(EV)の導入が広がる乗用車と異なり、トラクターやローラーは桁違いのパワーが必要になる。

井関農機の冨安司郎社長は「園芸工具で求められるバッテリーの馬力と農業トラクターでは100倍近い差がある。日産自動車のEV『リーフ』と比較しても4倍以上の電力が必要だ」と解説する。大出力の電池は、ただでさえディーゼルエンジン駆動の数倍高い電動トラクターの価格競争力を弱め、普及が進まない要因になる。

同社が愛媛大と共同で12年に行った試験走行では、エンジントラクター比で7割のエネルギー削減を実現した一方、1回の充電で耕せる面積は約1300平方メートルと3分の1にとどまった。

農地の大規模集積化がさらに進んでいる現状を踏まえると、実用化には電池性能の向上とともに、急速充電器の整備が不可欠になる。油圧ショベルやローラーとともに、電動化製品を今後普及させるためにはインフラ整備もカギになりそうだ。

日刊工業新聞2020年11月24日

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農機 電動化

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