「美」をビジネスに生かす時代
ビジネスを論理や理性だけで進める時代は終わった。グローバル企業では今、経営学修士(MBA)よりも、アートを学んだ美術学修士(MFA)が重宝されている。作家の山口周さんは著作「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」で指摘する。
ハーバード・ビジネス・レビューは2008年にすでにその傾向を報じた。直感や感性に基づくビジネスが今後一層伸びることは容易に想像がつく。だからこそ、彼らは美術系大学院に幹部候補を続々と送り込む。
日本でも美術館を訪れるビジネスパーソンが増えた。美術館側も意識しており、これまでコアな美術ファン向けだった講座をオンライン開催するなど新たな取り組みが目立つ。ゲームや拡張現実(AR)なども積極的に活用する。
もっともアートは日本語で「芸術」と訳されるが、語源はラテン語のアルスでこれはギリシャ語のテクネに由来する。つまり、もとは「学問」や「技術」という意味だ。
そう考えれば、アートとビジネス、アートとサイエンスの融合も違和感はない。科学技術にアートを加えた「STEAM教育」構想もしかり。過去、細分化され続けてきた人間の技が統合の時代を迎えようとしている。
日刊工業新聞2022年2月7日