業界初の実用化、セルロースナノファイバーを使った「電池絶縁体」の性能
特種東海製紙が市場投入
特種東海製紙は木質由来の新素材、セルロースナノファイバー(CNF)を使用したリチウムイオン二次電池向けセパレーター(絶縁体)「フィブリック」を2022年央にも市場投入する。従来の微多孔質フィルム製に比べ加工が容易で、高い耐熱性や電解液浸透性、低コストが特徴だ。プラスチック削減の機運が高まる中で置き換え需要などを取り込み、23年度の単年度黒字化、将来の事業セグメント化を目指す。
フィブリックは業界で初めて実用化したCNF製セパレーター。第1号の納入企業が内定しており、当面は同社の小規模プラントで生産する。需要開拓を進めつつ、設備の増強も視野に入れる。
フィブリックは電解液溶媒(プロピレンカーボネート)を使った浸透性の実験で即座に染み込むことを確認。このためフィルム製より電気抵抗を低減し、作業時間を短縮できる。従来のように塗工の別工程は不要で、膜化の工程内での機能付与が容易。高温下でもセパレーターの溶融の心配が少なく、安全性が高いという。
同社は新事業として環境に優しいセルロース製のセパレーターを十数年前から研究。11年には開発に成功したものの、初の試みで課題が多く景気変動などもあって、商品・量産化に約10年を要した。
島田工場(静岡県島田市)内のフィブリック専用設備で製造する。同社は30年度連結売上高で21年度予想比48%増の1200億円を計画しており、フィブリックで数十億円の売り上げを目指す。「新たな事業セグメントに育てたい」(松田裕司社長)としている。
リチウム電池用セパレーターは現在、化学、繊維メーカーなどが微多孔質フィルム製、不織布製などを手がける。
日刊工業新聞2022年2月4日