「世界生産1090万台」、トヨタが22年度計画を部品メーカーに示した狙い
トヨタ自動車が今春以降の増産に向け、サプライチェーン(供給網)の整備に動きだす。このほど、2022年度の世界生産計画(ダイハツ工業、日野自動車を除く)を1090万台にするとの方針を主要部品メーカーに示した。足元では半導体不足や新型コロナウイルス感染症の影響による稼働調整が続いている。今後の部品調達の状況次第で、計画を見直す可能性もある。
生産計画の内訳は国内が350万台、海外が740万台。21年度の世界生産は900万台を下回る見通しで、22年度はこれを200万台近く上回ることになる。計画通り進めば、トヨタ単体として初めて1000万台の大台を超える。
市場では旺盛な自動車需要の半面、世界的な減産で供給が追いついていない状況が続いている。この需給ギャップを春以降の挽回生産で埋めたい考えだ。合わせて23年度の世界生産計画は1100万台規模になるとの見通しを示した。
トヨタが部品各社に計画を示したのは、部品調達などの課題が解消した際の生産の急回復を見越し、体制を整えてもらうためだ。ある樹脂系部品メーカーの幹部は「事前にトヨタから高水準での生産について来られるか、打診があった」と打ち明ける。現在は人手不足が深刻で「設備の生産能力はあっても人がいない状態」(駆動部品メーカー幹部)。部品各社はこの先想定される高水準な生産に備え、在庫を積み増すなどしている。
ただ懸念はある。トヨタ幹部は半導体不足について「22年央あたりまで続くのではないか」と慎重に見る。足元では米テキサス・インスツルメンツの半導体供給が滞り、独ボッシュなどの生産に影響が出ているもようだ。このほか部品メーカーでの新型コロナによる調達不足や、物流の停滞なども生産に影響を与えている。今回示した計画を下方修正する可能性は否定できない。
他の自動車メーカーも挽回生産を想定するが、状況は不透明だ。ホンダとの取引が多い部品メーカー首脳は「需要自体は旺盛。春以降は生産量が増えると見込んでいたが、分からない」と困惑する。別の部品メーカー首脳も挽回生産に期待する一方、「夏頃までは不安定な状況が続くのでは」と憂慮する。
日産自動車は21年11月に21年度の世界販売見通しを下方修正したが、同社との取引が多い部品メーカー幹部は「21年12月以降も生産計画の修正は続いている」と明かす。思惑通りに生産回復できるか、部品調達の先行きが注視される。