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リチウムイオン電池に使う「ニッケル」、10年半ぶり高値圏の背景

リチウムイオン電池(LIB)の正極材などに使うニッケルの国際相場が約10年半ぶりの高値圏まで上昇している。中国や欧州での電気自動車(EV)販売の好調を背景に、ロンドン金属取引所(LME)に積まれた高品位ニッケル在庫の取り崩しが進み、需給の引き締まりが意識されている。供給面では、ウクライナ情勢をめぐって主要産地のロシアへの経済制裁の発動が警戒されていることも、相場上昇につながっている。

LMEのニッケル地金相場は、足元でトン当たり2万3000ドル近辺と3カ月前比で15%程度高く、さらに年初比では約1割高と上昇に拍車がかかっている。LIBの正極材などに使う高品位の「ニッケルブリケット」が大半のLME地金在庫が直近半年で約6割減少しており、年明けも取り崩しが進んで需給がタイト化している。

ニッケル需要の約7割を占めるステンレス鋼向け添加剤は、脱炭素を進める中国の粗鋼減産の影響が懸念されるが、LIBを搭載するEVの需要は好調だ。中国では2021年のEV販売台数が前年比約2・6倍、欧州では21年1―9月が前年同期比約9割増に拡大した。

また、世界のニッケル鉱石生産の約1割を占めるロシアの供給不安も相場を押し上げている。ウクライナをめぐって「軍事衝突が起きればロシアの資源会社に経済制裁が行われる可能性が高い」(マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表)との見方があり、供給面からの需給逼迫(ひっぱく)も警戒されている。

日刊工業新聞 2022年1月21日

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