シリコン量子を高精度で操作、理研が成功した意義
理化学研究所の野入亮人基礎科学特別研究員と武田健太研究員、樽茶清悟グループディレクターらは、オランダ量子技術ベンチャーのキューテックと共同でシリコン量子ドットの電子スピンを99%以上の精度で操作することに成功した。量子コンピューターの誤り訂正に必要な操作忠実度を達成した。実際に2量子ビットを用いて探索アルゴリズムを実行し、量子計算が可能であると実証した。
歪シリコンとシリコンゲルマニウムの基板上に量子ドットを作製した。ここに局所的な磁場をかけると、量子ドット中の電子スピンの向きが平行と反平行の四つのエネルギー状態に分離する。このエネルギー差にあったマイクロ波を与えると狙った電子スピンの向きに切り替えられる。
単一量子ビットの操作忠実度が99・8%で、2量子ビットを使った制御NOT操作の忠実度が99・5%。単一操作と制御NOT操作ができると、すべての量子操作が実現できると実証できる。99%が誤り訂正に必要な閾値とされていた。
量子コンピューターの開発では超電導系とイオントラップ系が先行している。シリコン量子ドットが操作忠実度を達成したことで有力候補に並んだことになる。シリコン量子ドット系は半導体製造プロセスと相性がよく、大規模集積化に向くと期待されている。成果は英科学誌「ネイチャー」に掲載された。
日刊工業新聞2022年1月20日