スパコン「富岳」が米コロナ研究特別賞に輝く、評価のポイントは?
飛沫予測モデルが評価
理化学研究所と神戸大学などの共同研究グループが行うスーパーコンピューター「富岳」を用いた新型コロナウイルスの飛沫(ひまつ)や微粒子(エアロゾル)の拡散モデルが、米国計算機学会の2021年ゴードン・ベル賞の「COVID―19研究特別賞」を受賞した。飛沫や微粒子についての理解と対策の重要性を啓発し、日本だけでなく、世界の人々の行動に変化をもたらしたことが評価された。
共同研究グループは富岳を使ってマスク素材や装着方法に加え、公共交通機関・室内での感染リスクなど1000以上の評価をしてきた。理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は「総合力が問われる賞を受賞できた。我々の努力が結実して大変うれしい」と喜んだ。
ゴードン・ベル賞は高性能並列計算を科学技術分野に適用することに関してイノベーションの功績が最も顕著と認められた研究に与えられる。スパコン界では個人の業績賞を除けば、最も権威のある賞とされる。
深層学習でも世界一に
理化学研究所と富士通は、スーパーコンピューター「富岳」が機械学習処理の性能を競う世界ランキング「MLPerf HPC」の一部門である、「CosmoFlow」で世界一になったと公表した。CosmoFlowは宇宙空間に分布する暗黒物質の3次元シミュレーションの結果から、空間の歪みを予測する深層学習(ディープラーニング)モデルの性能を競う部門。同部門のランキングは2020年に策定され、年に1回、11月に公表される。富岳は20年に同部門で2位だった。
日刊工業新聞2021年11月22日