タイに初めてデータセンターを設立するKDDIの思惑
KDDIは2023年春にタイ・バンコクにインターコネクション(企業間接続)データセンター(DC)を新設する。投資額は約100億円。同社がタイにDCを設けるのは初めてで、東南アジアの同社DCの中でも最大規模となる。第5世代通信(5G)の普及でトラフィック(通信量)が増加し、DCの需要も高まる。その中でもより市場拡大が見込まれる東南アジア市場を深耕し、DC事業の成長につなげる。(苦瓜朋子)
「5Gを支えるためにもデータセンターはますます重要な位置付けになる」―。12日のオンライン説明会で丸田徹執行役員ソリューション事業本部サービス企画開発本部副本部長は今回の投資の狙いをこう説明した。
KDDIはデータセンター事業を欧州や北米、アジアなど45拠点超で展開し、法人向けデジタル変革(DX)の基盤サービスとして稼ぎ頭に位置付けている。中でも注力するのが、コンテンツ事業者やクラウド事業、通信事業者が持つ他のDCと相互接続するインターコネクションDC。英国ロンドンの現地法人は事業者間接続数で世界一となっている。
同社は東南アジアを次の展開エリアに定める。タイではインターネット利用の増加によりトラフィック成長率が世界平均を上回る。これに伴い、DC市場もアジアでインドネシア、マレーシアに次いで高い水準で拡大する見通しだ。
新設する「テレハウスバンコク」は3階建てで延べ床面積9000平方メートル。4ルートから通信回線を引き込み、災害時も安定して利用することができる。
タイには競合となる米DC大手のエクイニクスはまだ進出していないという。東南アジアを中心に、今後成長が見込まれる新興市場でDC投資を拡大する計画だ。
政府主導の通信料金引き下げの影響により、主力である個人向け携帯通信サービスで収益を上げるのは難しい。海外大手とどのように差別化し、海外事業を拡大できるかかが問われる。