電動化対応急ぐ車部品メーカー大手、生かしたいモノづくり技術
トヨタ紡織は、既存の部品事業で培ったモノづくり技術を生かし、電動化対応を進めている。シート関連の精密金型技術や、エアフィルターに関わる技術を活用し、刈谷工場(愛知県刈谷市)で電動化対応製品としてモーターコア、セパレーター、リチウムイオン電池を生産する。今後、需要拡大を見込む電動化分野でも自動化などを進め生産の効率化を図る。(名古屋・山岸渉)
「モーターコア、セパレーターの生産ラインは、人が介在しない。革新的に次世代製品に対応するラインだ」―。トヨタ紡織の沼毅社長は胸を張る。モーターコアや燃料電池(FC)向けセパレーターの生産では自動化が進む。
モーターコアは「ローター」と「ステーター」という部品で構成する。ぞれぞれ厚さ0・3ミリメートルの電磁鋼板をプレスで打ち抜き、重ねて作る製品だ。金型やプレス機の工夫などでマイクロメートル単位の精度で加工でき、効率的に生産できるという。製品の検査では2次元コード(QRコード)で生産情報を管理し、トレーサビリティー(追跡性)を担保する。FC用のセパレーターは、厚さ0・1ミリメートルのチタン材をマイクロメートル単位でプレス加工し生産する。外観検査まで自動化している。
電動化対応製品の生産を支える要因の一つが、シート生産で培ってきた精密金型技術だ。具体的にはシートのリクライニングを調整する部品「ラウンドリクライナー」の金型技術を応用した。ユニット部品事業本部の榊原正己本部長は「マイクロメートル単位での精度を実現する金型を内製化し、保全もできる点が技術を支えている」と説明する。
また刈谷工場には、リチウムイオン電池の試作ラインを設けている。同社のリチウムイオン電池は充放電の効率が高く、高出力と高速充電を実現できる点が特徴という。電圧をかけて超極細の繊維を作り出す「エレクトロスピニング」技術などを活用して生産する。得意とする自動車用エアフィルターで同技術のノウハウを蓄積した。
現在、リチウムイオン電池は、無人搬送車(AGV)に搭載して実証実験を行っている。将来は自動車以外に建設機械などへの提案も想定する。