還元鉄プラント受注増やす神戸製鋼、脱炭素へ水素利用の道筋
神戸製鋼所の100%子会社、米ミドレックス(ノースカロライナ州)が、鉄鋼業界の脱炭素に向けたソリューションとして還元鉄プラントの受注を伸ばしている。このほどロシアのメタロインベストから、世界最大の年産能力208万トンの新規案件を獲得した。基本は還元に天然ガスを使うが、欧アルセロール・ミタルとは将来の水素利用を想定し、共同開発を行う。神鋼は海外向け同プラントに磨きをかけつつ、自らの製鉄工程でも二酸化炭素(CO2)の削減に取り組む。(編集委員・山中久仁昭)
ミドレックスは還元鉄プラントで約8割のシェアを持ち、90基超の納入実績を持つ。メタロインベストからは3月にも同等規模の案件を受注し、2025年までの稼働を予定。同技術なら電炉と組み合わせて高炉・転炉法に比べCO
2排出量を2―4割削減できる。当面は天然ガスを改質した水素リッチガスを還元剤とし、鉱石ペレットを使いシャフト炉で製造する。水素100%への移行も視野に入れており、大幅な改造をしなくても使えるというのが特徴だ。
神鋼は製品・技術によるCO2削減貢献の30年度目標を6100万トン超とし、ミドレックスの技術で7割以上を担う考えだ。ミドレックスのプラントは電炉鉄鋼メーカーが顧客となる。現状の導入実績は「天然ガスの値が安い中近東、北米、ロシア、北アフリカ地域が中心だ」(神鋼幹部)。天然ガスが高い日本での導入は容易ではないとみる。
鉄鋼業界でCO2が出ない水素還元が注目される中、神鋼はミドレックス方式では水素濃度75%の還元ガスの実績もあり、100%への引き上げに技術的ハードルは高くないと言う。欧州アルセロール・ミタルとは数年内に還元鉄年10万トンの大規模実証を予定している。「技術課題を確認して、いつでも水素対応を商業化できる状況にする」(幹部)と自信をのぞかせる。
ミドレックス方式は顧客の実情に応じ、技術をアレンジしやすいようだ。神鋼はミドレックス設備でつくった還元鉄を加古川製鉄所(兵庫県加古川市)で自ら活用する実証を行った。CO2削減効果を確認したが、本格活用には言及していない。国内での脱炭素化は、大手2社と同様に「複線アプローチで(低品位の鉄鉱石、原料炭を使う)フェロコークスや『コース50』(高炉内水素還元製鉄)などの技術開発に参画していく」(同)。
海外でのミドレックス方式普及、国内での複線的開発を並行して、得られる知見をグループ内で共有し、総合化するしたたかさを持つのかに注目したい。