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鹿島や清水建設が開拓するVR活用の可能性

建設業界で仮想現実(VR)を活用した技術開発が活発化している。鹿島はVR遠隔管理システムに複数人が参加できるための360度ライブ映像機能を追加。清水建設もプロジェクション型VR技術を活用した体感型共同学習システムを開発した。両社は臨場感のある映像空間を活用し、よりリアルで遠隔地からの参画も可能にした環境を構築。新型コロナウイルス感染の影響もあり、各社はVR技術を活用して業務を高度化し生産性向上を目指す。(編集委員・山下哲二)

鹿島とリコー、360度カメラで遠隔管理

鹿島とリコーは、VR遠隔現場管理システムにVR空間内のコミュニケーションを360度ライブ映像で行う機能を追加した。現場の状況を迅速に確認でき、複数人がいつでも遠隔地から360度ライブ配信映像内に同時参加することを可能にした。今後、360度カメラの設置現場を増やすことで、本社から複数の現場を遠隔でパトロールできる。

また参加者はライブ映像内で自由にコミュニケーションが取れるため、より迅速な合意形成が可能になった。パソコンや「iPad」などの端末からもVRゴーグルを装着した参加者と同じ360度ライブ映像を見ることもできる。

清水建、体感型の共同学習環境

清水建設は、プロジェクション型仮想現実(VR)技術を活用した体感型共同学習システム「VR―Commons」を開発した。室内の壁と床面に投影する映像コンテンツを利用したグループ学習や体験型学習の場を創出するVRシステムで、臨場感ある仮想現実の学習空間が体感できる新たな共同学習環境として、教育施設をはじめオフィス、工場、ホテルなどへの導入を目指す。

新システムでは、利用者はゴーグル型ディスプレーなどの装着が不要。室内の壁3面と床面の4面に投影した映像を同期することで、臨場感あふれる仮想現実の学習空間による没入型VR環境を構築した。

プロジェクション映像は、360度カメラで撮影した静止画・動画やビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)モデルなどのコンピューターグラフィックス(CG)画像を利用でき、グラフ、図表などの関連資料も背景の映像と重ねて表示が可能。ユーザーインターフェースには3Dモーションセンサーを採用し、利用者はジェスチャーで資料の呼び出し操作や移動操作を行える。拠点間通信機能も装備し、遠隔地と学習空間を共有できる。

両社とも現場への試行導入などで改善を進めながらVR技術の利用を広げていく。

日刊工業新聞2021年12月21日

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