イチゴを数えて熟度を即座に判定するロボットが面白い
越谷市農業技術センター(埼玉県越谷市、黒田寛美所長)は、GINZAFARM(ギンザファーム、東京都中央区、飯村一樹社長)などと共同で、イチゴ栽培ハウスでロボットを活用する研究・実証実験を2019―20年度に行った。ロボットはハウス内を走行し、イチゴの個数を数え瞬時に熟度を判定する。イチゴ狩りで提供できる個数を精度高く把握し、受け入れる来園客数の調整に生かす狙いだ。(さいたま・阿部未沙子)
埼玉県越谷市は、イチゴの観光農園「越谷いちごタウン」を管理する。同市農業技術センターに隣接し、敷地面積約1万9000平方メートルで8棟のビニールハウスがある。平時であれば「年間約3万人がイチゴ狩りを楽しむ」(同センターの高橋彰主任)という。
課題だったのが、収穫可能なイチゴの個数が正確に分からないこと。このためイチゴ狩りで受け入れる人数を調整できず、イチゴが収穫されずに余ったり、不足したりしたという。
ギンザファームとの共同研究を始めたのは19年の冬ごろ。イチゴの過不足という課題の解決のほか、イチゴ栽培のビニールハウス内で役立つロボットの開発を目指す狙いもあった。
同社は運搬、草刈り、データ収集、農薬散布を行う農業向けロボット「FARBOT(ファーボット)」を展開する。このファーボットを使って、19年11月からセンター内の試験温室で共同研究を実施。20年度は同社のほかに大学なども参加し、越谷いちごタウンで実証実験を行った。
ファーボットシリーズは4種類ある。このうち実証実験では「ベーシック」と「センシング」の2種類を活用した。ベーシックがイチゴの葉かき作業と、同作業後に出る葉などの運搬作業を担当した。もう一方のセンシングは、搭載するカメラでイチゴを撮影して個数を数えると同時に、人工知能(AI)で熟度を判定する役割を担った。
熟度の判定は色彩で行う。全体が赤く熟した状態の「フルレッド」、半分ほど赤く約3日後で収穫できる状態の「ハーフレッド」、赤くなり始めた状態の「スタートレッド」の3段階の画像をAIに覚えさせた。
カメラでイチゴを撮影すると瞬時に3段階のいずれかを判定する。実験結果では、フルレッドとハーフレッドは約100%認識できたが、スタートレッドは約70%の認識率。「イチゴが真っ白な状態をスタートレッドと認識する場合もあった」(ギンザファームスマートアグリ事業部マネージャー上田雄介氏)という。
イチゴの個数と熟度が分かることで来園客が多い休日の収穫量を事前に予測でき、受け入れ人数の調整が可能。今後、イチゴ狩りの予約を受け付けるシステムとの連携も視野に入れる。
共同研究では温度、湿度、日射量、二酸化炭素(CO2)濃度の可視化に取り組んだ。さらに病害虫の発生予測も行った。今後もロボットなどを活用し農場の“見える化”を進める方針だ。