多様なデータから「運動方程式」を導くAI技術が面白い
神戸大や阪大が開発
神戸大学の谷口隆晴准教授と陳鈺涵大学院生、大阪大学の松原崇准教授は、さまざまなデータから運動方程式を導く人工知能(AI)技術を開発した。電磁波や波の伝搬、生態系の変動などを表すハミルトン方程式が得られる。抽象化された運動方程式でなく、個々のデータごとにオーダーメードされた方程式が得られ精緻なシミュレーションが構築できる可能性がある。
ハミルトン方程式のエネルギー関数をAI技術で推定する。エネルギー関数が求まれば運動量を入れると動きを予測できるが、運動量はエネルギーに依存するため実際の観測データとして得られない問題があった。
そこで座標系に依存せず成り立つシンプレクティック形式を導入した。この形式が成り立つ条件もAIで推定し、位置と速度など計測できるデータを使えるようにした。
実験では二重振り子や捕食者と被食者の変動などの運動方程式を求め高精度で予測できた。運動方程式は制御に使える。現象を一般化した運動方程式でなく、個々の現象の方程式を導けるため、精緻なシミュレーションや制御が可能になる。
日刊工業新聞社2021年12月10日