「タップ」世界シェアトップの総合工具メーカー、収益向上へ二つのカギ
OSGはタップで世界シェアトップの総合工具メーカー。2021年11月期第2四半期はタップの売上高が過去最高、通期予想も上方修正した。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前期から急回復したが、大沢伸朗社長は「営業利益率は回復途上。もっと利益体質に変えていく必要がある」と気を引き締める。
創業の原点であるタップが収益の根幹をなすが近年はドリルやエンドミルも伸びている。顧客は自動車関連が約5割を占め、航空・宇宙や金型向けもある。
20年11月期の売上高は1044億円と30年前の約4倍に成長。売上高営業利益率の30期平均は12・5%と製造業としては高水準を維持しているものの、20年11月期はコロナ禍で8・0%にまで落ち込んだ。21年11月期は11・6%を見込んでいるが当面の目標とする20%達成にはもうしばらく時間を要する。
今後の収益力向上のカギを握るのが、DX(デジタル変革)とM&A(合併・買収)。最新のNEO新城工場(愛知県新城市)は現場のノウハウとデジタル技術を融合し、多品種少量生産と稼働率向上を両立した。また、グループ90社のうち約7割がM&Aによるものだ。石川則男会長は「顧客の加工や自社での実際のテストで最も切りくずを出している工具メーカー」を自負。「蓄積したデータから生まれる新しいアプリで次代を勝ち抜く」と差別化により収益性を高めていく。
また、20年11月期のROE(株主資本利益率)は4・4%、ROA(総資産利益率)は2・9%と、資本効率は悪化傾向にある。ここ2年はM&Aや先行投資がかさんだためだ。効率良く稼ぐ力が落ちているが、東海東京調査センターの大平光行シニアアナリストは「先行投資負担の回収待ちの状態。工場稼働率が上がってくれば収益は改善する」と分析する。
大沢社長も「必要に応じて柔軟に対応する」と、さらに一部増産投資も前倒しする方針。将来を見据えたスピード経営を貫く。
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