「大企業は中小企業化していく」(元伊藤忠会長)

丹羽宇一郎さん。「会社がなくなる!」著者インタビュー

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丹羽宇一郎氏(撮影 森清)

―読者層の想定は。

「これから働き手の中心となっていく若い人に読んでもらいたい。10年もたてば1995年前後から09年ころまでに生まれたZ世代(ジェネレーションZ)が30―40歳になり、日本の経済を担う。Z世代はインターネットの世界で育っていく人たちだ。我々とは違う考え方を持つようになるだろう」

―コロナ禍は企業にどのような変化をもたらしましたか。

「会社を変えるのは人間であって新型コロナウイルス自体ではない。ここで言う人間は社長だけではなく、会社で働く全ての人たちだ。逆に『コロナで会社は変わったか』と聞きたい。おそらく多くの人はコロナ禍前と同じことをしているだろう。地方に移って働く人や自宅で働いている人もいることは確かだ。一部で変化はあるが、会社全体が変わったとは言い切れない」

―デジタル変革(DX)が叫ばれています。

「20年前からデジタル化が必要と言われてきた。何もしなければ20年後もそう言われているだろう。労働人口が減少する前から人件費を削減する目的で機械化・自動化の機運が生じている。企業も自治体も国も何の目的でデジタル化をしているのか。予算や権限がバラバラでおのおのが同じような研究や取り組みをしている。これでは進みが遅い。各分野や業界が一丸となり、目的や権限を集中しなければ本当の変革にはならない」

―中小企業の躍進を期待されています。

「これから中小企業の時代が来る。約100年前に小さな企業が集まり、大企業ができてきた。100年かかって安い値段で、モノを大量に生産する時代を実現した。一方、あまりに大きくなりすぎたため、大企業でも管理できなくなっている。例えばインド人や日本人、アフリカ人などを一人の社長が把握するのは既に難しくなってきている。同じ会社ではなく、細分化する流れが起きる」

―大企業の中小化ということでしょうか。

「部品から見ても同じことが言える。大企業は中小企業など下請けに何万個という部品を依頼する。この管理も大変で、中間的に統括する企業が必要になっている。100年かけて大きくなった大企業は、今後100年くらいかかって分社化が進み中小企業化する。同じような機械で同じ製品を大量に生産する時代ではなくなった。インドとアフリカ、日本で同じ自動車に乗るはずがない。技術を軸に世界で協働する中小企業が求められる」

―今後の日本に対する課題と期待は。

「『裾野が狭いと山が低い』という例え通り、人口減少により優秀な人材も少なくなる。今後、日本は世界のどこに行っても負けるだろう。人間の社会は大ざっぱに言えば『2割優秀、6割は普通の人材、2割良くない』という比率になっている。ただ格差社会が問題で、これが進むと貧富の差が加速し、良くない2割の人が増えていく。これからの労働力はロボットと人工知能(AI)になる。まずはロボットとAIを使いこなす人間を育てることが必須になる」(川口拓洋)

丹羽宇一郎(にわ・ういちろう)氏 元伊藤忠商事会長

62年(昭37)名大法卒、同年伊藤忠商事入社。98年社長、04年会長。内閣府経済財政諮問会議議員、日本郵政取締役などを歴任し、10年に民間出身では初の駐中国大使に就任。愛知県出身、82歳。

『会社がなくなる!』(講談社 03・5395・3521)

日刊工業新聞2021年12月6日

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中小企業

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