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電子部品出荷額が26%増。値上げが進んだ品種は?

電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した日本メーカーによる4―9月の電子部品世界出荷額は前年同期比26%増の2兆1526億円と2年ぶりにプラスとなった。需要拡大と価格上昇が電子部品の出荷額を押し上げた。自動車やスマートフォン(スマホ)、産業機器などで好調な受注が続いたほか、顧客が在庫を積み増す動きも拡大。需給の逼迫(ひっぱく)を背景に、一部品種では値上げも進んだ。ただ9月単月では前年からの伸び率が10%にとどまるなど、足元では鈍化傾向もみられる。

品種別では自動車やスマホなどに幅広く使われるコンデンサーが前年同期比30%増の7502億円だった。コンデンサーと組み合わせて電流の波をなだらかにするインダクターも同32%増の1600億円。スマホ内蔵カメラなどのピント調節に必要なアクチュエーターは同44%増の1497億円、産業機器に使われる電源部品は同27%増の1172億円だった。

自動車はコロナ禍以前の水準まで生産台数が回復しなかったが、先進運転支援システム(ADAS)の普及などで1台当たりの電子部品の搭載数が増加。

スマホはカメラ機能を強化した新機種が堅調で、産業機器も半導体製造装置などの出荷が旺盛だった。半導体不足解消後の生産回復に備えるため、電子部品の在庫を積み増す顧客の動きも自動車を中心に強かった。

価格の上昇が出荷額を押し上げたとみられる品種もある。スマホやパソコンなどに用いるコネクターは同28%増の3036億円。銅や樹脂など原材料の値上がりを価格に転嫁するため、一部メーカーが顧客ごとに個別の価格交渉を行ったことが背景にある模様だ。一方、積層セラミックコンデンサー(MLCC)では値上げはなかったものの、性能が高い分高価格なMLCCの比率が増え、出荷額増加の一因になったとみられる。

ただ足元では変化も見られる。ゲームコントローラーのボタンやパソコンのキーボード、自動車のシートベルトに使われるスイッチの9月の出荷額は前年同月比9%減の322億円で、8カ月ぶりのマイナスとなった。巣ごもり需要の一巡や完成車の減産が影響したとみられる。

日刊工業新聞2021年12月1日

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