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地方大学の注目の的。「山梨」2大学の連携で見えてきた効果

地方大学の注目の的。「山梨」2大学の連携で見えてきた効果

山梨大学公式ツイッターより

山梨大学と山梨県立大学が設立した法人が今春、大学間連携を後押しする国の「大学等連携推進法人」制度の第1号に認定され、初年度の2021年度から教育・研究で効果が見えてきた。22年度から看護学の両大学院で相手大学の科目を活用する「連携開設科目」を始める。両大の大学院生指導や共同研究も新展開を迎えており、「将来は私立や県をまたいだ大学の参加も考えている」(山梨大の島田眞路学長)として連携拡大を見据える。(編集委員・山本佳世子)

山梨大と山梨県大は2019年に一般社団法人「大学アライアンスやまなし」を設立した。同法人は21年3月末に全国初の大学等連携推進法人として文部科学大臣の認定を得た。制度の特例措置として、相手大学の科目を活用する「連携開設科目」を21年度に開設し、相補的な一般教養39科目からスタートした。これは対象科目を履修すれば別大学の科目であっても単位を認めるというものだ。

周知期間が短かったため前期の履修者数は限られるが、学生の所属大学になかった「こども文化」「山梨学」「ワインと宝石」など人材育成や地域資源の科目が人気だった。オンライン講義ながら理系が強い山梨大と文系が強い山梨県大の特色もあり、相互に刺激があったという。今後は対面での学生交流の効果も期待される。

両大学の重なりを強みにつなげる工夫も看護学などで進む。山梨大の幼稚園教諭養成と、山梨県大の保育士養成でも相互乗り入れを見込む。社会科学系の地域貢献人材の学び直し(リカレント)教育も大きい。このほか相手大学の大学院生への指導実施や、教員同士の共同研究の企画が出ている。

研究連携では「地域分散型の水供給」の産学・地域連携プロジェクトが代表例だ。今秋に両大学のほか、拓殖大学、山梨県甲州市などが参加して科学技術振興機構(JST)の事業に採択された。水源探索や水再生の技術、ユーザー支援システム、費用便益分析など文理融合で取り組む。

さらなる連携の拡大や質の向上で、両大学の学生・教員の満足度をどこまで高められるかが、大学等連携推進法人としての成功のカギとなってきそうだ。

関連記事:山梨の2大学グループが一番乗り、文科省が新設した“踏み込んだ”大学連携の価値
日刊工業新聞2021年11月25日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
山梨の両大学の組み合わせは、連携開設科目を中心に多くの地方大学が注目している。「山梨学」「ワインと宝石(鉱物の伝統産業がある)」といった科目の人気は、なるほどと感じる。ただ「新たに獲得した履修者数」という効果に絞ると、残念ながらさほど高くない。多い科目でも主幹大学(もともと科目を用意していた大学)の履修生数に対し、相手大学からの履修生数は1割ほど。ゼロの科目も少なくない。初年度やコロナ下というのも影響しているだろう。ただこの連携開設科目を中心に両大学が議論を進める中から、共同研究や、相互の学生指導など広がりが出てきており、連携の全体の効果はなかなかのものだと思う。これについては引き続き、記事にするので乞うご期待。

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