グループ再編に一区切りの三菱ケミカル、総合力の発揮なるか

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三菱ケミカルホールディングス(HD)は2020年の田辺三菱製薬の完全子会社化でグループ再編の大枠に一区切りをつけた。10年に三菱レイヨンを、14年に大陽日酸(現日本酸素HD)を連結子会社化。17年に三菱化学と三菱樹脂、三菱レイヨンの素材系3社を統合して「三菱ケミカル」とし、グループの形を変えてきた。

約4900億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施し、田辺三菱製薬を完全子会社化した理由の一つは、再生医療向けの多能性幹細胞「Muse細胞」の事業化だ。三菱ケミカルHD傘下の生命科学インスティテュート(東京都千代田区)が研究してきたが、事業化には製薬会社の知見が必要となる。

医薬業界では新薬研究開発費の増大、素材業界ではバイオ技術利用の拡大が進んでいる。20年2月に田辺三菱製薬の上場を廃止して迅速な意思決定をできるようにするとともに、グループ内での連携を強化し総合力を発揮させる狙いだ。

一方、産業ガス事業を担う日本酸素HDは医薬のようにグループ一体化を急ぐ必要はなく、三菱ケミカルHDの出資率は50・6%となっている。

田辺三菱製薬の完全子会社化を発表後、三菱ケミカルHDの越智仁社長(当時)は「世の中は『化学』や『医薬』を求めていない。業界の枠を超えて、製品やサービスを組み合わせて特定の目的に応える“アプリケーション”を求めている」と語った。

同社は炭素循環やデジタル社会基盤などをテーマに、社会課題の解決につながる事業拡大を目指す。今後の焦点はグループ内のシナジーを創出して事業の中身を変えることで、グループ体制はその基盤となる。

事業ポートフォリオの変革は①自社の強み②市場の成長性③カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現への寄与―を判断基準に進める。4月に就任したジョンマーク・ギルソン社長は「カーボンニュートラルの潮流の中で三菱ケミカルHDを勝者にしたい」と語る。

ただ、ギルソン社長は企業運営の課題として持ち株会社制や多数の企業を抱える組織の複雑さも指摘する。事業ポートフォリオを見直した後、最適なグループ構造を再度模索する可能性もある。

日刊工業新聞2021年10月7日

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