【決算一覧】業績上向く「地方銀行」、それでも楽観ムードになれない深い事情

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コロナ禍対策で企業倒産は減少したが…

地方銀行の業績が回復している。主要地銀・グループ20社の2021年4―9月期連結決算は、19社が当期増益だった。新型コロナ対策の政府や民間による実質無利子・無担保融資で企業倒産が歴史的な低水準に抑えられ、貸し倒れに備える与信費用が減少した地銀が多かった。22年3月期連結業績も18社が当期増益を予想するなど好調が続くが、与信費用を据え置く地銀が目立ち、慎重姿勢は根強い。

地銀全体でも、4―9月期は好決算だった。全国地方銀行協会(地銀協)会員のうち非上場1行を除く61行の4―9月期単体決算は、51行が当期増益だった。与信費用は前年同期比42・6%減となった。柴田久会長(静岡銀行頭取)は「経済が回復する中で地銀界の決算も順調に進んできた」と評価する。

信用調査2社による4―9月の倒産件数はともに3000件を割り、約60年ぶりの低水準となった。与信費用減により地銀決算は上向きだが、楽観ムードは少ない。

実質無利子・無担保融資の返済の本格化や経済再開による資金需要増加により、倒産件数は遠からず増加に転じるとみられる。急増すれば地銀の経営環境悪化が懸念される。

地銀は融資以外の収益源拡大が課題だが、銀行の出資や業務範囲の規制を緩和する改正銀行法の22日施行は転機になり得る。柴田会長は「新しい事業領域の改革が広がる」と期待を示す。取引先の事業承継などの本業支援と併せ、稼ぐ力を高められるかが試される。

東日本/予防的引き当て強化

埼玉りそな銀行21年4―9月期決算会見での福岡社長

コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)は21年3月期、21年4―9月期と連続で融資焦げ付きに備えた予防的引き当てを実施した。21年10月―22年3月期も「コロナの影響を見つつ必要な引き当てを行う」(大矢恭好社長)。東京きらぼしFGは事業性ファイナンス推進や新型コロナ関連融資拡大などで、21年4―9月期は貸出金利息が前年同期比10億円増加。一方で管理強化で与信関連費用が同17億円減少した。

埼玉りそな銀行は与信費用の21年度計画について「不確実性を踏まえると与信費用の計画は従来以上に高く持っておく」(福岡聡社長)と期初計画の65億円を据え置いた。

めぶきFGの4―9月期はコロナ禍でデジタル化に関する相談や人材紹介事業など増加した役務取引が利益を押し上げた。一般貸倒引当金繰入額は同1億円増の8億円となった。

七十七銀行は与信関係で大口回収や保守的引当など関係費用が減少した。北洋銀行の4―9月期は2期ぶりの増益だが、22年春以降は「不透明な状況が続くだろう」(安田光春頭取)として予防的引き当てを強化する。

関西・中四国/通期、5社が上方修正

関西と中国、四国の主要地銀6社は、いずれも22年3月期業績予想で当期増益を見込む。資金利益の増加や4―9月期の与信関連費用が想定を下回ったことなどで、5社が通期の当期利益予想を期初公表値から上方修正した。

与信関連費用は21年4―9月期に京都銀行、池田泉州ホールディングス(HD)、ひろぎんHD、伊予銀行が前年同期比で増額した。21年10月―22年3月期は「(今後の)景気などから慎重に考えないといけない」(菅哲哉関西みらいFG社長)との見通しが大勢を占める。

資金需要は「念のために借りた部分の返済が大手企業を中心に始まり、中小企業も余裕があるところは返済が増え、落ち着いてきた」(土井伸宏京都銀頭取)とみられる。一方、企業の資金繰りは「現時点で厳しくなる動きはないが、(資金繰りが)問題となるのが先に伸びる可能性はある」(鵜川淳池田泉州HD社長)との見方もあり、先行きの不透明感は残っている。

中部/実質業務純益2社増

中部の主要地銀の4―9月期は、次世代システム稼働の経費がかさんだ静岡銀行を除く2社が実質業務純益を増やした。各社は融資に代わる新たな収入源の確保に力を入れ、ほくほくFGは「投資信託の販売やコンサルティングなどの活動が実を結んだ」(庵栄伸頭取)ことで役務取引の利益が増加した。十六FGは20年4―9月期に大型の不良債権処理をした影響で与信関係費用が前年同期比約7億円減った。ただ、与信関係費用は増加傾向で「新型コロナや市場の影響を考え、不安材料のある取引先について貸倒引当金繰入額を保守的に積み立てた」(池田直樹十六FG社長)。

22年3月期業績はコロナの感染状況や原材料価格の高騰など「予断を許さない状況」(同)。「中小企業のデジタル変革(DX)化やM&A(合併・買収)など課題解決にきめ細かく対応していく」(柴田久静岡銀頭取)方針だ。

九州/通期当期益を上方修正

九州の主要2社は22年3月期業績予想を上方修正した。ふくおかFGは当期利益予想を期初計画比30億円増の530億円と見込む。「4―9月期は追い風だった」(柴戸隆成会長兼社長)ため。「(コロナ禍は)予断を許さない。資金支援、本業支援が最重要」とする。

西日本FHも当期利益予想を同30億円増の当期利益235億円に修正。村上英之社長は「下期(21年10月―22年3月期)から22年度に向けて資金需要がどれくらい戻るか。伴走型支援が主要テーマだ」と掲げる。

両社とも株式市場の好況、施策奏功などで有価証券利息配当金をはじめとした資金利益、投資信託販売手数料など役務利益が増加。コロナ関連融資効果で信用コストも低水準で、21年10月―22年3月期も経営環境の持続に期待する。

日刊工業新聞2021年11月22日

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