相次ぐ証券と地銀の連携。それぞれのメリットとは?
証券業界で地方銀行を中心とする地域金融機関と連携する動きが広がっている。野村証券は4月に阿波銀行との業務提携を開始。同様の提携は山陰合同銀行に次ぐ2例目で、現在も複数行と議論している。顧客基盤の拡大に加え、注力する事業承継や中堅企業のM&A(合併・買収)などに地銀が持つ情報力やノウハウを生かしたい考えだ。地銀にとっても、人口減少や長引く低金利の中、証券会社との連携で証券業にかかるコストを削減し、資産形成ニーズを取り込めるメリットがある。(高島里沙)
野村証券が地銀と提携する上で最も重視しているのが、地銀側が地場で投資信託などの預かり資産ビジネスの拡大を必須として捉えているかだ。新井聡副社長は提携先の山陰合同銀行と阿波銀行について「(先方に)その思いが強かった」と振り返る。
多くの銀行から問い合わせを受けており、今後の提携に関しては複数行と議論している状況だ。
また地銀広域連合「TSUBASAアライアンス」に参加する千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行とは、資産形成などのアドバイスやコンサルティングに対する対価として手数料を受け取る共同出資会社の設立に向けて準備を進めている。手数料を受け取れる情報を提供できるかがカギを握るため「我々にとっても非常に大きなチャレンジだ。顧客から対価を頂けるアドバイスやコンサルティングのサービス内容を確立することが重要」(新井氏)と強調する。
一方、最大で地銀10行との提携を目指す「第4のメガバンク構想」を掲げるSBIホールディングス(HD)は8行と資本業務提携済みで、2022年3月期に残り2行と提携する方針だ。川島克哉副社長は「経営資源を考えると残り2行が適当。複数の地銀と交渉している」とする。提携先の福島銀行や、じもとHDの業績については「20年有価証券のポートフォリオを入れ替えて損失を出したので、21年度はV字回復の年と位置付ける」(森田俊平専務)と手応えを見せる。
また対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型サービスの提供を推進するのが、ロボアドバイザー(資産運用の自動化)を活用した資産運用を手がけるウェルスナビだ。北国銀行などと提携する。顧客の9割が20―50代のため、地銀の顧客層と補完関係にある。
証券業界では、株式などの取り引きによる売買手数料が減少傾向にあり、地銀などとの連携で資産形成ニーズを呼び込もうとしている。