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M&Aの動きが活発化、インテグラル・佐山代表に聞く日本型PEファンドの可能性
主要国 金融緩和―資金流入
日米欧など主要国の金融緩和による“カネ余り”を背景に、国内外でM&A(合併・買収)の動きが活発化している。新型コロナウイルス感染症の流行で景気が悪化し、大企業がグループ会社をプライベート・エクイティ(未公開株、PE)ファンドに売却する動きも出てきた。バブル経済崩壊後や2000年代初頭の金融危機時のように、不良債権を買い取る「ディストレストファンド」も立ち上がる。日本のM&Aをけん引するファンドのいまを追う。
大手企業の構造改革支援
新型コロナの感染拡大を受け、手持ち資金の確保や事業構造改革を進めるため、非主力事業を投資ファンドに売却する動きが国内大手企業で目立つ。00年初めから07年まで新たなファンドの組成が相次ぎ、投資が活発化。08年のリーマン・ショックによる金融危機を経て、16年以降は再び市場が拡大傾向にある。
国内では近鉄グループホールディングス(GHD)が25日、傘下の近鉄不動産と近鉄・都ホテルズが保有する8ホテルを、米投資ファンド大手ブラックストーン・グループに売却すると発表。また、資生堂は2月、低価格帯の日用品を製造・販売する「パーソナルケア事業」を欧州系大手投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズに売却すると発表した。売却額は1600億円に上り、資生堂では中高価格帯の化粧品事業に経営資源を集中するとしている。
00年代からPEファンドの組成や運用に携わってきたシルバーレイ・キャピタル(東京都渋谷区)の中野光陽社長は、コロナ禍の国内PEファンドの状況について「20年前半に投資案件ベースではコロナ禍でいったん動きが止まったが、20年後半からは増えてきた」と話す。また、機関投資家などからのファンドへの出資については「コロナがあろうとなかろうと、資金は継続的に入ってきている」と明かす。
その背景として中野社長は「投資を実行した後のイグジット(出口)として、事業会社や別のファンドなどの買い手のリスク許容度が高い。新規株式公開(IPO)環境も悪くない」と説明。また、ファンドからの投資とセットで実行されるレバレッジド・バイアウト(LBO)ローンの資金も、金融機関には潤沢にあるという。
一方で、地方銀行など金融機関が抱える不良債権を買い取る「ディストレストファンド」も立ち上がってきている。「グロース」と呼ばれる成長が見込める企業への投資に加えて、事業再生型の投資が今後、増えていくことが見込まれる。
【インタビュー】インテグラル代表取締役・佐山展生氏
投資会社インテグラル(東京都千代田区)の代表取締役パートナーで、スカイマーク会長を務める佐山展生氏に、PEファンドによるM&Aについて聞いた。
―リーマン・ショックとの投資環境の違いは。「今回、金融セクターは打撃を受けておらず金融以外の業種が影響受けていることと、もう一つは誰も先を読めないということだ。体力がある企業は残るし、そうでない企業はリタイアする。ほとんどの業種がそうだと思う。コロナ禍前までは、需要が100あったとしても、供給が100でバランスしていた。ところがコロナ禍で需要自体が縮まった」
―航空業界も需要の落ち込みが激しいです。「あらためて認識したのが、“キャッシュ・イズ・キング”ということだ。すなわち手持ちのキャッシュ(現金)に加えて、借り入れ余力。そこの勝負になる。固定費は毎月出ていくので、資金がなくなったら金融機関に借り入れをする。そこで資金が調達できなくなったら、ダウンするしかない。スカイマークは幸いなことに、20年3月末に130億円近くのキャッシュがあった。プラス300億円の借入枠があったので、430億円まで確保できた。航空業界の中では比較的余裕があるところからスタートしている」
―M&Aの話に戻ります。コロナ禍で先が読めない難しさ、とは。「例えば結婚式場だったら、今までのやり方でやらなくていいよねという、『そもそも論』になってくる。我々はプリモ・ジャパン(東京都中央区)というブライダルジュエリーの会社に投資したのだが、結婚式や式場と違い婚約指輪はなくならない。要はコロナ禍で変容する業態と、しない業態の違いということになる」
「コロナ禍でかえって業績が伸びたところもある。例えばIT関連の多くは仕事が増えている。コールセンター運営会社なども同様だ。コロナ禍前後で需要が増えているところと減っているというのが一つ。もう一つは代替があるかないか、その業態の需要が戻るかどうか。これらが一つの目安になる」
―日本型PEを掲げていますが、通常のPE投資と違うところは。「投資家から預かった資金に加えて自己資金も出すという、ハイブリッド投資をしており、必要とあらば常駐で人材を投資先企業に送ることもある。常駐を経験した人は成長して戻ってくるので、人材育成にもなる」
―M&Aでは投資家から高いリターンも求められます。「投資先企業から見れば、あの会社には自分たちの会社を売ってほしくないということもある。我々としては、投資先の意見を尊重することで、ファンドに対する信頼度が高まり、次の投資にもつながる。あのファンドはどうかと聞かれて『結局、自分たちがもうけたいだけや』と言われてしまうと、投資家も損することになる。投資先との信頼関係を築くことが大切だと思う」
【略歴】さやま・のぶお 76年(昭51)京大工卒。帝人を経て87年三井銀行(現三井住友銀行)入行。99年ユニゾン・キャピタルを共同設立し、代表取締役。04年GCA代表取締役、08年インテグラル代表取締役。京都府出身、67歳。