3期連続世界一のスパコン「富岳」。コロナ禍の感染予防にも貢献できた理由

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スーパーコンピューター「富岳」が処理速度で3期連続世界一となった

理化学研究所と富士通が共同で開発し、3月に本格稼働したスーパーコンピューター「富岳」が処理速度を競う世界ランキング「トップ500」など3指標で3期連続世界一となった。7月1日に発表される、ビッグデータ(大量データ)の解析能力を競う「Graph500」でも世界一となる。3期連続の4冠で、富岳の総合的な性能の高さを見せつけた。

ランキングは毎年6月と11月に公表される。富岳のシステムは432の筐(きょう)体(ラック)に15万8976台のコンピューターを格納した構成。トップ500における測定結果は、1秒当たりの計算速度が約44・2京回(京は1兆の1万倍)で、2位の米国のスパコン「サミット」に比べて約3倍の大差をつけた。

ほかに産業利用など実際のアプリケーション(応用ソフト)での性能を競う「HPCG」では2位サミットの約5・5倍、人工知能(AI)で活用される性能を競う「HPL―AI」では同じく2位サミットの約1・7倍の性能差をつけている。

理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は「3度4冠に輝き、富岳の広い分野における世界的な先進性が示された」とし、富士通の新庄直樹理事は富岳で得られた成果により「(超スマート社会)『ソサエティ5・0』の実現につながっていくことを期待する」とコメントした。

計算速度に加え、使いやすさや省電力を追求した上での快挙を高く評価したい。

使いやすさで産業利用も加速を

理化学研究所と富士通が共同開発し、3月に本格運用に入ったスーパーコンピューター「富岳」が計算速度を競う世界ランキング「トップ500」で3期連続の世界第1位(V3)を達成した。

スパコンを巡る開発競争は日米中の三つどもえの構図で、次の目標は「エクサ(100京)」スケール(規模)とされている。富岳はアプリケーション(応用ソフト)性能で前機種「京」の100倍を掲げるが、1秒当たりの計算速度は約44・2京回(京は1兆の1万倍)とエクサスケールには届いていない。このため、1年前には富岳が世界最速を名乗っていられる期間はそう長くないとの見方もあった。

だが、エクサの壁は予想以上に高く、富岳は、V2達成で終わった京の記録を上回る成果を実現した。また、産業アプリの処理速度を評価する「HPCG」や人工知能(AI)の計算性能を示す「HPL―AI」、省エネ性能を示す「Graph500」も各1位を堅持し、トップ500も含め、“3期連続4冠達成”という快挙となった。

V1からV3まで1年余にわたり、富岳はウイルス飛まつの可視化などを通して、感染予防に貢献してきた。こうした喫緊の社会課題に迅速に対応できたのも、富岳の特性である「プログラミングのやりやすさ」があってこそといえよう。

次は用途展開だ。すでに理研を中心に次世代コンピューティング研究や災害リスク評価などの学術研究に加え、産業分野の研究も動きだしている。

メーカーである富士通も、富岳とその商用機である「プライムHPC」を対象に、航空機の熱流体解析や自動車の衝突安全性向上などの商用アプリの動作検証を、ソフトベンダー各社とともに推進している。

世界最速マシンといっても使われなければ意味がない。わが国が目指す超スマート社会「ソサエティ5・0」に向けて、富岳が担う役割を広げたい。

日刊工業新聞2021年6月29日

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