「不揮発性メモリー」を鉄・シリコン化合物で制御、東大などが実現
電子デバイスを省電力・高機能化
東京大学の平山元昭特任准教授らは、自然界に豊富に存在する鉄とシリコンの化合物で電源を供給しなくても記憶を保てる「不揮発性メモリー」の情報記憶技術に応用できる機能を実現した。鉄・シリコン化合物の表面が結晶内部とは異なり、磁石と同じ性質があり電気を通すことを明らかにした。電子デバイスの省電力化や高機能化などにつながることが期待される。
近年、半導体などの電子デバイスは集積度の限界や情報処理のエネルギー消費量の急増に伴い、高性能化や新機能の付与に向けた研究が進められている。中でも内部は絶縁体だが表面に電気を通す「トポロジカル絶縁体」は、表面状態が高効率・省電力なスピン操作を可能にするとして注目されている。だが、材料となる重元素は希少で毒性を持つなどの課題があった。
研究グループは豊富な鉄とシリコンによる化合物に着目した。これまで鉄・シリコン化合物の結晶内部は磁石の性質がなく、電気を通さない状態であるため電子デバイスへの応用には不向きとされてきた。しかし表面の状態を調べたところ、磁石と電気を通す性質が表面の約0・3ナノメートル(ナノは10億分の1)にのみ存在することが分かった。
さらに電流によって磁化の向きを制御できることが分かった。このため、磁化の向きで情報を記憶する不揮発性メモリーを電気的に高速制御する手法に応用できる。
理化学研究所や東北大学、日本原子力研究開発機構などとの共同研究。成果は18日付で米科学誌「サイエンス・アドバンシーズ」に掲載される。
日刊工業新聞2021年11月18日