次世代メモリー「MRAM」の記録性能アップ。素子を薄く均一に積層

東北大とキヤノンアネルバが共同開発。

  • 0
  • 0
MRAM向けに開発した磁気トンネル接合(MTJ)素子の顕微鏡写真
 東北大学の手束展規准教授は、次世代メモリーの磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)で、記録性能を高める技術を開発した。情報の記録に必要な磁気トンネル接合(MTJ)素子の出力を従来の約2倍の200ミリボルトに高めた。素子を構成する材料の組み合わせを工夫し、薄く均一に積層して実現した。MRAMの実用化に必要な大容量化・高集積化への貢献が見込める。

 キヤノンアネルバ(川崎市麻生区)と共同で開発した。MRAMはMTJ素子内部の二つの磁性の向きを、電圧をかけて変化させることで情報を記録する。互いの磁性の向きが垂直に近づき出力が大きいほど、性能は高まる。実用化には、小電圧で効率よく出力を上げる技術が求められている。

 今回、MTJ素子の酸化マグネシウム(MgO)絶縁層を、厚さ9オングストローム(100億分の1メートル)という薄さで、均一に作製した。またMTJ素子を構成する薄膜層の中にタングステン層を入れ、垂直方向の磁化の安定性を高めた。電圧をかけた際に生じる抵抗値を低く抑えたまま、出力電圧を上げられた。

 今後は磁化の安定化や抵抗値の低下につながる技術を開発する。MRAMの書き込み速度の向上や消費電力の削減が可能になる。

 MRAMはDRAMに変わる不揮発性メモリーとして、実用化が期待されている。情報の読み込みと書き込み時以外は電気を使わないため、数十ナノ秒(ナノは10億分の1)という短時間で書き込みが可能になる。

【用語】磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)=記憶素子に磁性体を使った不揮発性メモリーの一種で、磁気によって情報を記憶する。現在、実用化されているDRAMに比べて書き込み速度が大幅に速く、低消費電力化や高集積化が可能とされている。

日刊工業新聞2016年8月18日

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

STT-MRAMの実用化に寄与する技術を東北大学が開発した。キヤノンアネルバは真空蒸着装置で貢献。大学と企業の共同研究案件は、なかなか出口に至らないことが多い。では大学がもっと企業寄りの研究を手がければいいのかというと、そうでもない。大学は大学の、企業は企業の本分を尽くすと同時に、両者を上手くつなげて回す役がまだまだ足りていないなぁ、と感じている。

関連する記事はこちら

特集