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企業物価が40年ぶりの伸び率、アナリストも「驚きの数値」になった背景

日銀が発表した10月の国内企業物価指数(速報値、2015年平均=100)は、前年同月比8・0%上昇の107・8だった。伸び率は、オイルショックの影響が残った1981年1月以来となる40年9カ月ぶりの大きさ。水準もバブル景気入り口の1986年2月以来、35年8カ月ぶりの高さだった。原油をはじめとした資源高が企業物価に色濃く反映された。

各国が経済活動を一斉に再開したことで資源などの需要が増え、企業物価の上昇につながった。品目別では、石油・石炭製品が最も上昇に寄与し、鉄鋼、化学製品、非鉄金属が続いた。

石油・石炭製品は前月比7・9%上昇で、1バレル=145ドルを突破した2008年7月を超えた。前年同月比では44・5%上昇だ。これら川上の品目にとどまらず、飲食料品、輸送用機器など広範囲に上がった。

企業間では原材料価格の高騰影響を取引価格に転嫁、吸収している。最終財への波及は一定のリードタイムがあるとされ、今後は幅広な商品・サービスの値上げにつながりそうだ。長期にわたり賃金が据え置かれ、また欧州でみられるコロナ禍の再拡大が懸念される中、物価上昇が続けば国内消費を下押しし、日本経済にマイナス影響を及ぼしかねない。

供給追いつかず、大幅上昇招く 大和総研シニアエコノミスト・神田慶司氏

国内企業物価指数の前年同月比8・0%上昇は驚きの数値だ。コロナ禍から経済活動が正常化に向かう中で、供給が追いついていないことが大幅上昇を招いた。円安進行でさらに上昇しやすい。原油など資源高の経済への影響は大きい。資源高が起きない場合と比較して、2021年度に国内総生産(GDP)の27兆円が海外に流出すると当社は試算する。

企業は過去には物価上昇を負担してきたが、今回は家計にも負担してもらうことになるだろう。企業だけでカバーするのは難しい。家計の貯蓄は増えており、値上げを進めやすい。企業物価は今後も上昇するとみるが、伸び率は鈍化するだろう。いまは20年度の反動で、大幅上昇となっているためだ。(談)

日刊工業新聞2021年11月12日

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