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7年ぶりの高水準、原材料・エネルギーの価格上昇が企業収益の重荷に

国内外で原材料やエネルギーの価格上昇が一段と進行している。燃料や樹脂製品向けなど用途の広い原油は、約7年ぶりの水準で高止まりし、サプライチェーン(供給網)の中で部材などに価格を反映する動きが広がっている。ただ、国内では川下まで広く価格転嫁が浸透していないことに加え、海外では物流逼迫(ひっぱく)による輸送費上昇も重なり、コスト高が企業収益の重荷になっている。

企業間取引の国内物価動向を示す日銀の企業物価指数は、10月の総平均(速報値、消費税を除くベース)が前年同月比7・9%上昇となり、前月(同6・4%上昇)から伸びが加速した。製品別の寄与率は、「石油・石炭製品」「鉄鋼」「非鉄金属」が合計で6割近くと、原材料やエネルギー関連の価格上昇が物価の押し上げに大きく影響した。

一方、川下の消費財も同4・2%上昇と前月(同3・2%上昇)から伸びたが、原油高が直接反映されやすいガソリンが単体で寄与率の4割近くを占める。原材料の価格転嫁が広く浸透していない様子がうかがわれる。

野村証券によれば、同社の指数構成銘柄で4日までに2021年度上半期決算を終えた189社において、決算発表後の通期経常利益予想に対する上半期進捗(しんちょく)率は中央値で52・8%と、10年度以降の平均49・7%を上回った。同社はリポートで「裏を返すと下期業績は相対的に慎重にみていることが示唆される」と指摘し、要因の一つとして「供給制約や原材料高が保守的に見積もられている可能性」をあげる。

三井金属では、金属精錬の還元に使うコークスの価格上昇の影響を21年度通期でマイナス14億円と見込む。上半期は業績にほぼ影響がなかったが、下半期は石炭価格の上昇の影響を受ける。

海外でも生産コストの上昇が企業収益の重しになっている。UACJが展開するタイのアルミ材生産事業は、21年度上半期にエネルギー価格と海運など物流費の上昇で7億円のマイナス影響があり、棚卸資産影響前の経常損益が5億円の赤字となった。同社は「コストを顧客に転嫁する交渉を継続している」(石原美幸社長)状況だ。

足元では、中国の脱炭素対応による粗鋼減産の影響で鉄鉱石が急落した一方で、鉄鋼製品は需給が引き締まり、日本の鋼材価格の下支えになっている。天然ガスは経済活動の再開やロシアからの供給懸念を背景に欧州などで高値圏で推移し、需要シフト観測にもつながって原油高に寄与している。

今後は、燃料需要が増す冬場の気温低下の程度次第で、化石燃料価格への上昇圧力が強まる可能性がある。また、市中では半導体などの部品供給網の混乱の長期化も懸念され、「企業グループ内で在庫を二重に持たないようにすることが重要だ」(豊田通商の岩本秀之取締役最高財務責任者〈CFO〉)との声が聞かれる。

当面は、相場変動への対策として原材料や部品の購入時期を分散することも含め、調達に慎重な対応が必要になりそうだ。

日刊工業新聞2021年11月12日

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