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賛同広げる中小企業の再生エネ100%推進組織、ついに参加数が200社・団体に

賛同広げる中小企業の再生エネ100%推進組織、ついに参加数が200社・団体に

中小企業が団結して太陽光や風力など再生可能エネの普及を促す(京都府内のメガソーラー)

再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す中小企業が結集した組織「再エネ100宣言REAction(アールイーアクション)」の参加数が200社・団体に到達した。中小企業が団結して発信力を高め、政府に再生エネ普及を促す狙いで設立してから2年。2021年度中に44社・団体の再生エネ100%達成が見込まれるなど実績も出ており、自治体とも連携が始まっている。

アールイーアクションは19年10月、中小企業や大学など28社・団体が集まって発足した。50年までに使用電力を再生エネ化すると宣言し、進捗(しんちょく)を毎年公開することが参加条件だ。21年初めに100社・団体に到達後も加盟が増え、11月に入って200社・団体となった。

政府による気候変動対策の強化が参加を増やす後押しとなっている。アールイーアクション事務局の金子貴代氏は「再生エネ利用をアピールしたい企業も少なくない」と話す。環境活動を自社のホームページに掲載する企業が多いが、取引先を含めて広く訴求したい企業にとって参加は“環境先進企業の証”となって発信力が高まる。

実際、アールイーアクションのホームページでは再生エネ利用の実例を動画も交えて紹介している。建設機械部品などを製造する二川工業製作所(兵庫県加古川市)はため池に太陽光発電所を設置し、発電した電気を電力会社経由で購入している。さらに取引先にも提供し、社会への再生エネ普及にも一役買っている。繊維加工の艶金(岐阜県大垣市)は建築廃材を燃料とした木質ボイラから染色加工の温水を供給している。“再生エネ熱”は海外の衣料メーカーから評価され、取引拡大につながった。

再生エネ由来の電気や証書の購入といった具体的な手段の説明も多い。中には「太陽光パネルの導入を検討したら思ったよりも安かった」「先行して取り組んだことで注目が集まるようになった」などの体験談もあり、企業の参考になっている。再生エネ100%達成も21年3月末までで19社・団体となり、22年3月末には44社・団体へ増える見込みだ。

自治体も注目する。鳥取県は脱炭素社会推進課のホームページでアールイーアクションに参加する県内の10社・団体を掲載している。アールイーアクションと連携したセミナー開催や「再エネ100宣言RE Action推進・再エネ活用支援事業補助金」という名称の支援制度も創設した。

県は50年までの二酸化炭素(CO2)排出ゼロを目指しており、達成には企業の脱炭素化が欠かせない。そこで県が旗を振ってアールイーアクションへの参加を呼びかけており、金子氏によると「県庁の職員が企業を訪問して説明してくれている」という。

環境省によると排出ゼロを目指すと宣言した自治体は479団体。自治体には具体策が求められており、地元企業の協力も必要。アールイーアクションも参加が増えたとはいえ、関心が低い企業も少なくない。自治体とアールイーアクションの連携は双方にメリットがありそうだ。

出典:日刊工業新聞2021年11月5日

再エネ100%達成「30年まで」半数

出典:日刊工業新聞2021年11月2日

事業で使う電気全量の再生可能エネルギー化に意欲的な中小企業が増えている。再生エネ活用に取り組む中小企業などの組織「再エネ100宣言REAction(アールイーアクション)」の参加者のうち54%が2030年までの達成を目標に掲げていた。再生エネ導入の障壁が少ない中小企業が産業界の脱炭素を先導する。(編集委員・松木喬)

アールイーアクションは19年10月、地球環境戦略研究機関などが発起人となって発足した。中小企業や大学、医療機関などが事業に必要な電力の100%再生エネ化を目指して活動しており、10月29日時点で198社・団体が参加する。

今回、10月19日時点で加盟していた194社・団体を対象に事務局が達成時期の目標を調査したところ、22年までが27%(52社・団体)、23―25年が11%(21社・団体)、26―30年が16%(32社・団体)だった。31―50年も44%(86社・団体)を占めるが、半数を超える54%が30年までを目標としていた。

また、20年度末で19社・団体が再生エネ100%を達成していた。21年度中には長野県立大学、小型電気自動車を開発するTakayanagi(浜松市西区)、バネ製造のマルダイスプリング(名古屋市中区)、遠州信用金庫、東亜ディーケーケーなど25社・団体も100%に到達する。

さらに、太陽光などで発電した電気であることを証明する証書を活用した「再生エネ由来電気」を販売する電力会社が増えている。事業所の規模によっては現状の電気料金と遜色のない価格で購入できるため、中小企業が100%化で先行している。

一方、大規模事業所は電気の契約単価が安いため、コストで見合う再生エネ由来電気は少ない。また大企業は拠点数も多く、すぐに切り替えが難しい。大企業を対象とした再生エネ推進の国際組織「RE100」に参加する日本の62社のうちセイコーエプソンが23年(海外拠点含む)、旭化成ホームズが25年の達成を掲げるが、大半は40年や50年を目標とする。

政府は30年度までに国内の温室効果ガス排出量を13年度比46%削減する目標を定めた。実現に向けて産業部門には同38%減が求められており、すべての企業が対応を迫られる。また、取引先の環境配慮を気にする大企業が増えており、さらに中小企業の再生エネ利用が促されそうだ。

松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
一般紙・テレビはCOP26の報道で盛り上がっています。正直、充実ぶりがうやらましいです。日刊工業新聞は再エネ100宣言REActionを紹介しました。参加は200者に増え、44者が再エネ100%達成です。そして鳥取県がサポートし、組織名を冠した補助制度もあるというは新鮮でした。こうした取り組みが各地に広がってほしいです。次の取材が楽しみです。

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