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9年ぶり全面改良「アウトランダーPHV」、三菱自社長が自信示す“個性”の正体

9年ぶり全面改良「アウトランダーPHV」、三菱自社長が自信示す“個性”の正体

三菱自動車の「アウトランダー」のPHVモデル

三菱自動車は、主力スポーツ多目的車(SUV)「アウトランダー」のプラグインハイブリッド車(PHV)モデルを約9年ぶりに全面改良し、12月に国内で発売する。加藤隆雄社長は「自信を持ってお届けするフラッグシップ(旗艦車種)」と仕上がりに自信を示す。連合(アライアンス)を組む日産自動車と部品を共有して開発を効率化しつつ、PHV技術や4輪駆動(4WD)技術で“個性”を発揮できた自負心が垣間見える。

新型アウトランダーではアライアンスとの協業を深めて開発を効率化した。その象徴が日産が開発を主導する共通プラットフォーム(車台)の採用だ。

「プラットフォーム共通化で日産と同じような車になるのではとの心配の声も聞いた。しかしPHVでは独自の技術を搭載し、本当に三菱自動車らしい仕上がりになった」。加藤社長は新型車の完成度に自信を深める。

アライアンスでも三菱自が開発を主導するPHVのパワートレーンでは、容量を従来比約4割増の20キロワット時に拡大した電池を採用。電気自動車(EV)走行時の航続距離を同約5割延長し、充電頻度を低減して使い勝手を高めた。4輪制御技術では出力を高めた駆動システム「ツインモーター4WD」を組み合わせ、滑らかで力強い走りを実現した。

「新しい時代では自動運転など求められる機能が増え、すべてを自社でやるにはリソースの面で限界がある」。加藤社長はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など技術の進展に合わせて新車開発を続ける難しさをこう指摘する。

新型車では日産の運転支援機能を、コネクテッドカー(つながる車)技術ではアライアンスの機能をそれぞれ搭載。加藤社長は「顧客が求めている機能をアライアンスを活用することでうまく具現化できた」とし、共通車台を採用した最大のメリットと強調した。

開発の成果はガソリンエンジン搭載モデルを4月に発売した米国で現れている。21年7―9月期の米国での同社新車販売台数が前年同期実績を割り込む中、アウトランダーは上質感などが評価され前年同期比約3割増と躍進した。加藤社長は「半導体不足もあり十分供給できていないが、日本からの輸出車両が米国に着いた瞬間に売れていく」と笑顔をみせる。

既に静粛性や走行性能で高い評価を得るPHVモデルは、日本を皮切りに豪州やニュージーランド、米国では22年後半、その後中国への投入を予定する。「三菱自らしさ」の表現に成功した新型アウトランダー。アライアンスで存在感を維持するためにも今後の売れ行きが注目される。

日刊工業新聞2021年11月3日

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