垂直な壁を上るロッククライミングロボ、宇宙で活躍へ【動画あり】
九州工業大学の永岡健司准教授と川野智博大学院生らは、爪のあるグリッパーでつかみ応えを確かめながら壁面を登るロッククライミングロボットを開発した。ロボットは爪先を動かしながら引っかかった力を検出し、腕を動かして把持できているか確認してから機体を持ち上げる。宇宙での微小重力環境で岩壁や穴の中を探索する基礎技術になる。
6本の爪の先に針のある鉤(かぎ)爪型グリッパーを開発した。このグリッパーで岩肌などをなぞりながら、鉤爪が引っかかる力を検出する。引っかかりがなければ、つかめる場所を探し直す。
鉤爪が引っかかると腕を小さく動かして機体を移動させるだけの力をかけて登ることが可能か確かめる。この二つのつかみ応えを確かめる補償機能を繰り返して岩壁を登る。実際にロッククライミング用の壁を用意して実験したところ、補償機能は有効だった。垂直な壁面を登る速度は分速1センチメートル程度だった。
現在は機体を吊って重量を補償した状態で登っている。つかみ直す場所の選定は遠隔操縦で決めることから、今後は自律化する。
新型ロボットの用途は月面の縦孔探査や小惑星探査を想定する。微小重力環境では車輪は接地圧が確保できず移動効率が低い。跳躍型は移動効率が高いものの、目的地への移動精度に課題がある。
多脚型は移動が精密に行えるというメリットがある。ただ、機体や制御が複雑になる課題があった。つかみ応え補償など、移動の確実性を高める制御が簡単になると実用化へのハードルが下がる。
日刊工業新聞2021年10月5日