国内整形外科で手術ロボの導入進む。普及のカギは採算性

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挿入するスクリューの位置をリアルタイムに表示する

国内整形外科の領域でナビゲーションシステムや制御技術を使った手術支援ロボットの導入が進んでいる。術者の経験やスキルに依存せず、安定的な手術が行える。医療機器世界大手のアイルランドのメドトロニックは脊椎手術に特化したロボットを世界で展開しており、3月から国内販売を開始。英スミス・アンド・ネフューは人工膝関節置換手術を支援するロボットを10月に国内投入した。一方、手術支援ロボットを導入することによる採算性の確保が課題となっている。(石川雅基)

メドトロニックは、脊椎を固定材料で固め、脊椎の安定性を高める脊椎固定術に使う「マゾール X」を展開する。世界で約250台が導入され、5万例以上の実績がある。国内では3月に発売し、現在2施設が導入済みだ。価格は約1億6000万円。

脊椎固定術は、脊椎を固定するためのスクリューを椎骨に挿入し、スクリュー同士をロッドで連結して固定する。椎間板ヘルニアや腰椎すべり症など脊椎の変性疾患の治療に用いられる。近くに神経や太い血管が通っているため、スクリューを注入する位置や角度、深さに高い正確性が求められる。

マゾールXは、外科医の経験やスキルに依存せず、術前の計画通りにスクリューを打ち込むことが可能。まず術前に撮影した患者のX線画像データから構築した3次元(3D)画像上に医師が手術計画を作成。手術では計画に基づいたロボットアームの動作で、手術器具を狙った場所に誘導する。手術器具の位置情報はリアルタイムに画面の3D画像上に表示されるため、術者はそれを見ながらスクリューを計画した位置まで打ち込める。日本メドトロニックの森田智博シニアプロダクトスペシャリストは「再現性の高い手術ができる」と長所を強調する。

「マゾール X」は、赤外線を送受信するナビゲーションカメラ㊧、サージカルモニター㊥、サージカルアームで構成する

スミス・アンド・ネフューは、人工膝関節置換手術を支援するロボット「コリ サージカル」の国内販売を月内に開始した。赤外線カメラを用いた3D位置計測技術で、ロボットが骨を削るドリルの動きを制御する。骨を正確に切除でき、熟練の医師でも難しい前十字靱帯(じんたい)と後十字靱帯をともに温存する両十字靱帯温存型人工膝関節置換術にも対応する。消費税抜きの価格は5000万円。21年に十数台、22年に20台以上の販売を目指す。東京大学医学部付属病院の乾洋整形外科・人工関節センター長は「ロボットを使用することで迷いがなくなり、手術時間が短縮された」と評価する。

一方、手術支援ロボットの普及のネックになるのが採算性の確保だ。日本メドトロニック広報は「課題は導入と運用のコスト」と話す。乾センター長は「(コリを使用した手術の診療報酬の加算は)ナビゲーション加算の2000点(2万円)しかなく、割に合わない」と指摘。「加算を増やせばロボットの導入が進むはず。コンピューター支援手術を使った方が10年後の治療成績が良いという論文が増えてきた」(乾センター長)。診療報酬改定で、科学的な根拠を基に加算に結びつけることができるか注目される。

日刊工業新聞2021年10月21日

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