農林水産業のCO2排出ゼロへ、「みどりの食料システム戦略」とは?

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CO2排出・化学農薬使用減

持続可能な食料生産に向けて農業の変革が始まる。農林水産省は「みどりの食料システム戦略」の中で2050年に農林水産業の二酸化炭素(CO2)排出ゼロ化や化学農薬の使用量50%低減(リスク換算)を打ち出した。化学・農薬メーカー各社は戦略転換が求められる。

「みどりの食料システム戦略」が2050年までに目指す姿と取り組み方向

持続可能な農業に求められるのは環境負荷低減だけではない。世界人口を支える食料増産と農業の収益向上も実現しなければ、持続可能にはならない。加えて、日本では生産者の減少・高齢化への対応も必要となる。

農水省は生産性向上と持続性の両立を目指す「みどりの食料システム戦略」を策定。目指す姿や目標達成に必要な技術革新、工程表などをまとめた。これは世界共通の動きで、欧州は2030年までに化学農薬の使用・リスクの半減を目指す。

日本では21年度から既存農薬の安全性を最新の科学的知見を基に国が確認する「再評価制度」が開始。「厳しい基準でふるいにかけられる」(農薬大手幹部)といい、農薬市場への影響は必至だ。

農薬の生態系への影響を軽減するため、ここ数年規制強化が進んでいる。農薬登録に必要な試験は増え、「世界市場向けの農薬を1剤開発するために必要な研究開発費は、以前の200億円から、現在は300億―400億円に高まっている」(小澤敏三井化学アグロ社長)という。

研究費確保や海外市場開拓に向けて経営資源を増やすため、業界再編はすでに始まっている。クミアイ化学工業は17年にイハラケミカル工業と経営統合し、日本農薬は18年に機能化学メーカーであるADEKAの子会社となった。三井化学子会社の三井化学アグロは、Meiji Seikaファルマの農薬事業買収を決めた。国内農薬市場が縮小するならば、さらなる業界再編は避けられないだろう。

化学農薬の使用量低減に向けて、技術面では少量で効く新規農薬の開発やデータを活用したスマート農業、天然物由来の農薬がカギを握る。従来の農薬販売から、農薬とICT(情報通信技術)を組み合わせて防除を効率化するサービスへのビジネスモデル転換が進みそうだ。

例えば、日本農薬がドローンを活用した農地の異常診断で、DJI JAPAN(東京都港区)と提携。上空から異常を検知し、最適な防除を行う農薬などを提案する。住友化学は、微生物農薬や植物生長調整剤などを「バイオラショナル」製品群として強化する。

一方、農薬を使わない植物工場などを展開する三菱ケミカルは環境意識の高まりを商機とにらむ。

次回以降、農業の新時代に挑む各社の戦略を探る。

日刊工業新聞2021年10月19日

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