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ホンダジェット1号機納入へ。その魅力に迫る

ホンダジェット1号機納入へ。その魅力に迫る

4月にホンダジェットを国内初公開。機体の前で握手する(右から)藤野道格ホンダエアクラフトカンパニー社長、伊東孝紳ホンダ社長、山本芳春ホンダ専務


藤野社長「日本市場にチャンス」


 ホンダジェット開発者でホンダエアクラフト社長の藤野道格氏にホンダジェットの事業戦略について聞いた。

 ―納入を直前に控えた感想は。
 「高度な技術を開発してここまできたが、飛行試験の最中でまだ気を引き締めないといけない。顧客が待っているので早く期待に応えたい」

 ―今のオーダー待ち時間は。
 「2年待ちだ。生産は急に増やせない。納入初年度は50機、3年目から需要の状況を見ながら80―100機と生産を順次拡大する」

 ―現在の受注活動は。
 「今は欧米がメーン。ただ単に売るのではなくメンテナンスなどのサービス体制が重要だ。トータルパッケージで顧客に説明できるようになってから受注活動に入っている」

 ―今後の有望市場は。
 「南米、特にブラジルは有望。機数も多いし伸びも大きい。その次の位置づけとしてアジアを狙っている」

 ―日本市場は。
 「東京五輪開催に合わせ、政府がビジネスジェットの受け入れ態勢を整備しようとしている。当初、優先度は高くなかったが今は参入を真剣に考えている。国土の広さからしてカバーできる。インフラさえ整えば可能性はある。ビジネスシーンだけでなく、沖縄ハネムーンツアーや家族記念旅行などレジャーのニーズも見込まれる」

 ―世界シェア目標は。
 「シェアは追わない。ライバル機種が少ないから、ヒット機種が出れば市場は大きく変わる。潜在的な需要から考えて年80機をコンスタントに販売していく」

 ―開発のポイントは。
 「主翼の上にエンジンを配置したのが特徴だ。空気抵抗を考えれば胴体につけるのが常識。ところが主翼の上でもエンジンのつける位置によって抵抗が急激に減る『スイートスポット』を発見したことが一番大きかった」
(聞き手=池田勝敏)
【ホンダジェット】
 最大7人乗りの小型ビジネスジェット。寸暇を惜しむ経営者が主な顧客だ。主翼上部にエンジンを配置したのが最大の特徴。これにより室内空間を広げ、燃費向上につながった。最高巡航速度は時速420ノットで競合機種と比べ5―20%高い。現在の価格は5億円程度。

【航空機エンジン「HF120」】
 ホンダとGEが共同開発した小型ターボファンエンジン。ホンダが主に高圧圧縮機を、GEがタービンを担当。ホンダの自動車技術を生かし燃費を競合比10%高めた。オーバーホール(分解検査・修理)間隔が同2割程度長い5000時間という寿命も特徴。
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
2015年は日本の「航空元年」になる――。今年、業界は明るい話題が続きました。MRJの初飛行と並んで、その「元年」を意味するもう一つの話題が、ホンダジェットの型式証明取得です。 米国で開発し、米国で作り、主に欧米向けに販売する。それでもホンダが参入するのは、やはり創業者以来続く空への夢、熱意。これを置いてほかに語ることはできないでしょう。日本には市場が小さいゆえの判断です。 機体とエンジンの両方を自分たちでやるという、航空業界では異例のメーカーとなります(エンジン大手GEと共同ではありますが)。エンジンを中核技術とする車メーカーらしい、まさに「空飛ぶ車」として、ぜひ成功してほしいですね。

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