ホンダジェット1号機納入へ。その魅力に迫る
ホンダの米航空機会社ホンダエアクラフトは12月8日付で、米連邦航空局(FAA)から、機体の安全性などを認める「型式証明」を取得した。年内にも1号機を引き渡すとみられる。ホンダが航空機事業への参入を目指して以来、約30年の歳月が経った。ホンダは、機体とエンジンの両方を自社で手がける業界唯一のメーカーとして、世界のビジネスジェット市場に参入する。
ホンダが4月23日に国内初公開した小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」は、すでに欧米で100機以上を受注している。米ノースカロライナ州グリーンズボロの組立工場で量産体制を整えており、当局の型式認定を取得でき次第、2015年中に納入が始まる見通しだ。航空機事業会社のホンダエアクラフトの藤野道格社長は記者会見で「最新の安全基準に沿って設計したホンダジェットは、高い競争力と信頼性を備えている」と強調。将来の日本市場への参入にも意欲を示した。
「性能と快適性において、小型ビジネスジェット機の新しいスタンダードを切り開くホンダの自信作」―。ホンダの伊東孝紳社長はホンダジェットの実機を前に、こう評価した。
ホンダジェットの最大の特徴は、エンジンを主翼上面に配置した点にある。通常の小型ビジネスジェット機はエンジンを胴体に取り付けている。ホンダジェットは独自のエンジン配置により、客室と荷物室の容量を確保。高速飛行時の空気抵抗も大幅に低減した。
機体の価格は約450万ドル(5億4000万円)。14年6月の量産1号機の初飛行成功後、北米13カ所で顧客やディーラー向けの試乗会を実施した。今回のツアーでは4月27―28日に成田国際空港で試乗会を実施。5月19―21日にスイス・ジュネーブで開かれるビジネス航空ショー「EBACE2015」で欧州初公開する。その後は欧州9カ所で試乗会を開き、受注獲得につなげる。
現在、世界のビジネスジェット市場は年700機程度とされる。2008年秋のリーマン・ショック前と比べて半減したが、30年には同1500機まで回復・拡大するとの予測もある。
ホンダジェットが属する小型ビジネスジェットは20年ごろに年350機程度の市場になるとの試算がある。ホンダエアクラフトの藤野道格社長は、世界市場の現状について「今の市場規模でみると北米、欧州の次に有望な市場は南米」と説明。ただ「伸び率は南米に比べてアジアが高く、20年にはアジアの市場規模が南米を抜く見込み」(藤野社長)で、中長期的にアジア地域での受注活動も強化する構えだ。
日本市場も「以前はそれほどでもなかったが、最近は問い合わせが多くなってきた」(同)。20年の東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて、政府がビジネスジェットの受け入れ態勢を整備する動きもある。
「規制緩和の働きかけなど、熱意を持ってビジネスジェットの普及に努めている人もいる。すぐにではないが、長期的にはチャンスがある」と、藤野社長は日本市場への期待を示す。
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1機あたり5.4億円
日刊工業新聞2015年4月24日付
ホンダが4月23日に国内初公開した小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」は、すでに欧米で100機以上を受注している。米ノースカロライナ州グリーンズボロの組立工場で量産体制を整えており、当局の型式認定を取得でき次第、2015年中に納入が始まる見通しだ。航空機事業会社のホンダエアクラフトの藤野道格社長は記者会見で「最新の安全基準に沿って設計したホンダジェットは、高い競争力と信頼性を備えている」と強調。将来の日本市場への参入にも意欲を示した。
「性能と快適性において、小型ビジネスジェット機の新しいスタンダードを切り開くホンダの自信作」―。ホンダの伊東孝紳社長はホンダジェットの実機を前に、こう評価した。
ホンダジェットの最大の特徴は、エンジンを主翼上面に配置した点にある。通常の小型ビジネスジェット機はエンジンを胴体に取り付けている。ホンダジェットは独自のエンジン配置により、客室と荷物室の容量を確保。高速飛行時の空気抵抗も大幅に低減した。
機体の価格は約450万ドル(5億4000万円)。14年6月の量産1号機の初飛行成功後、北米13カ所で顧客やディーラー向けの試乗会を実施した。今回のツアーでは4月27―28日に成田国際空港で試乗会を実施。5月19―21日にスイス・ジュネーブで開かれるビジネス航空ショー「EBACE2015」で欧州初公開する。その後は欧州9カ所で試乗会を開き、受注獲得につなげる。
販売は欧米が中心。今後は南米、アジアも有望視
現在、世界のビジネスジェット市場は年700機程度とされる。2008年秋のリーマン・ショック前と比べて半減したが、30年には同1500機まで回復・拡大するとの予測もある。
ホンダジェットが属する小型ビジネスジェットは20年ごろに年350機程度の市場になるとの試算がある。ホンダエアクラフトの藤野道格社長は、世界市場の現状について「今の市場規模でみると北米、欧州の次に有望な市場は南米」と説明。ただ「伸び率は南米に比べてアジアが高く、20年にはアジアの市場規模が南米を抜く見込み」(藤野社長)で、中長期的にアジア地域での受注活動も強化する構えだ。
日本市場も「以前はそれほどでもなかったが、最近は問い合わせが多くなってきた」(同)。20年の東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせて、政府がビジネスジェットの受け入れ態勢を整備する動きもある。
「規制緩和の働きかけなど、熱意を持ってビジネスジェットの普及に努めている人もいる。すぐにではないが、長期的にはチャンスがある」と、藤野社長は日本市場への期待を示す。
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