スマートコミュニティ社会へ、「電磁雑音」の評価技術が必須な理由

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昨今、電力会社による最大需要電力の記録更新に関する報道を耳にする機会が増えている。電力需要の逼迫(ひっぱく)を受け、企業のみならず一般家庭においても節電への意識が高まっている中で、供給側と需要側の間の電力の流れを効果的に制御し、電力エネルギーの需要と供給のバランスを最適化するスマートグリッドの導入が積極的に進められている。

さらに、IoT(モノのインターネット)や機器間(M2M)といった最新の情報通信技術によって、家庭内のあらゆる電化製品が無線や有線でインターネットにつながるスマートコミュニティー社会が実現しつつあり、我々は技術発展による利便性を享受できるようになった。その一方で、これら技術の構成要素である発電システムや電気電子機器から電磁雑音が発生すると、スマートコミュニティー自体の通信機能に障害が発生し、広範な被害が生じる可能性も否めない。

例えば、LED照明に起因すると考えられる電磁雑音が無線通信システムへ電磁干渉を与えた例が報告されている。より信頼性の高い社会インフラを構築するためには、管理された電磁環境下において正常動作が保証されるシステムを実現する必要があり、そのためには電磁雑音を正確に測定する技術とともに、それが周囲へ与える影響を適切に評価する技術が必須となる。

情報通信研究機構(NICT)では、電磁雑音と通信に関するEMC(Electro Magnetic Compatibility、電磁的両立性)の研究開発を行っている。

さまざまな電磁雑音が混在する複雑な電磁環境においては、特定の電磁雑音を識別するための評価技術や、省エネ機器から放射された電磁雑音による電磁干渉のメカニズムの解明が欠かせない。

図は、ダクトレール(電源ライン)上で測定用のセンサーを走査しながら、LED電球から生じる電磁雑音の空間分布を精密に測定している様子である。これらの測定技術を基に、電磁雑音の分布から周囲の通信機器へ与える影響を評価する技術を開発した。

さらに、LED電球のような同時に複数使用される機器に対しては、電磁雑音の発生・伝搬における重畳性のメカニズム解明や電磁雑音評価技術の確立が課題となっており、近年はそれらの研究開発に注力している。

昨年からサービスが開始された第5世代通信(5G)の普及や次世代無線通信システム(ビヨンド5G)に関する研究開発が急速に進む中、多数の電気電子機器(雑音源)と無線通信端末が混在する状況において、電磁干渉を未然に防止するための電磁雑音評価技術の確立を目指す。

電磁波研究所 電磁波標準研究センター・電磁環境研究室 主任研究員 呉奕鋒(ウー・イフォン)
青山学院大学大学院博士課程修了後、2007年NICTに入所。電気電子機器から発生する電磁雑音の精密測定、統計的評価および無線通信システムの電磁干渉に関する研究に従事。博士(工学)。

日刊工業新聞2021年8月31日

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