重工大手が事業再編に動く、再び迎えたテコ入れの局面

  • 1
  • 4
三井E&Sホールディングスが製造する艦艇

重工大手が事業再編に動いている。三菱重工業は三井E&Sホールディングス(HD)から艦艇・官公庁船事業を10月に買収する一方、工作機械事業を日本電産に譲渡した。川崎重工業は鉄道車両と2輪・4輪車の両事業を10月に分社する。成長力や既存事業との補完性をにらみながら、再びてこ入れの局面を迎えている。(孝志勇輔)

三菱重工が事業ポートフォリオを組み替えるのは、強みを伸ばすだけでなく、事業によっては他社に委ねる方が成長性の点で得策との思惑がある。艦艇事業では護衛艦を得意とし、三井E&Sから補給艦などを取り込む。

10月には火力発電システム子会社の三菱パワーも統合する。両社の経営資源を集約し、脱炭素化に向けて激しさを増す技術開発競争に備えるのが狙いだ。

再編の背景には、事業体制の見直しを進めながらも「事業の入れ替えはあまりできていなかった」(小沢寿人最高財務責任者〈CFO〉)ことがある。工作機械事業を譲渡したのも「日本電産の方針で展開していく方が(工作機械の)潜在力を発揮できる」(同)という。中長期の視点で成果を上げやすい事業構造に転換するために、入れ替えがさらに進むことも見込まれる。

川重は立て直しのめどが付いた鉄道車両と、ブランド力の高い2輪車などの事業を分社し、機動的な展開をしやすくする。「(2輪車などの)多様なニーズに対応」(橋本康彦社長)できるように、他社との協業も進める。このほかにも事業ポートフォリオの見直しが加速しており、日立造船と地中にトンネルを掘るシールドマシン(掘削機)事業を統合した新会社を10月に設立する予定。成長戦略を支える水素事業では、水素関連のノウハウを持つ川重冷熱工業を完全子会社化した。

IHIは気象観測や宇宙分野の技術を持つ明星電気(群馬県伊勢崎市)を完全子会社化した。もともと同社が上場子会社だったこともあり、両社の製品連携や経営資源の活用などに制約が生じていた。そのため同社との相乗効果をさらに創出するには完全子会社にする必要があった。これによりIHIの宇宙分野の子会社であるIHIエアロスペース(東京都江東区)と明星電気との連携による新事業の展開を目指す。

重工大手はさまざまな事業を抱え、事業再編を繰り返してきた。今回は譲渡や事業の切り出しも目立つ。コロナ禍で低迷が続く航空機分野に代わって、成長事業を見いだすためにポートフォリオの入れ替えが進む可能性がある。


【関連記事】 日立が絶対に売却しない子会社とは?

日刊工業新聞2021年9月27日

関連する記事はこちら

特集