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「ITからDX企業へ」。大変革を推進する富士通の行方

「ITからDX企業へ」。大変革を推進する富士通の行方

時田隆仁社長

富士通は「IT企業からデジタル変革(DX)企業への転換」(時田隆仁社長)を掲げて、グループ再編と一体で経営改革を推進している。パソコンや携帯電話といった非コア事業の売却などの構造改革はほぼ一巡し、現在はコア事業の「テクノロジーソリューション」の強化へと舵を切っている。グループ経営では「日本を欧米やアジアなどと同格の一つのリージョン(地域)として捉える」(古田英範副社長)など、大改革が進行中だ。

ここ数年間で売却した事業はハードウエアが多く、懸案だった半導体事業も2019年度に非連結となった。さらにシステム構築(SI)子会社の統合に伴う効率化なども相まって、富士通全体の収益率が改善し、同年度には24年ぶりに連結営業利益率が5%の大台に乗った。25年度ころをめどに同10%に引き上げる計画だ。

収益向上に向けて、19―20年頃から攻めの経営へとシフト。DXのコンサルティング会社・リッジラインズ(東京都千代田区)の設立や、富士通マーケティングや富士通エフ・アイ・ピーなどの主力グループ会社を統合して、国内事業に特化した富士通Japan(東京都港区)を相次ぎ発足した。

富士通Japanの社員数は約1万2000人と大所帯。外目には富士通本体が二つに分かれたようにも見えるが、自治体や医療、文教、中堅民需などの国内ビジネスを集約することで、一つのリージョンとして明確化するのが狙い。古田副社長は「日本で作った製品・サービスを海外展開するなどの従来型ビジネスを抜本的に改革するため」とグループ経営から見た意義を強調する。

もう一つは開発業務のデリバリー改革。21年にグローバル標準の開発を促進する組織「ジャパン・グローバルゲートウェイ」を設立。インドなど世界8カ所の開発拠点「GDC」との連携強化でグローバルの力を日本に引き込む体制を築いた。

グループ経営ではこれら新しい仕組みが大きな歯車となって動かすことが問われる。

日刊工業新聞2021年7月22日

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